俳句

幸田露伴を展開する 13 「白芥子句考」

芭蕉紀行文集―付嵯峨日記 (岩波文庫 黄 206-1) 作者:松尾 芭蕉 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1971/11/16 メディア: 文庫 師匠や仲間に迷惑をかけることを恐れたのか、保美に蟄居していた杜国にはほとんど句は残っていないが、杜国という号を捨て、野人…

幸田露伴を展開する 12

芭蕉紀行文集―付嵯峨日記 (岩波文庫 黄 206-1) 作者:松尾 芭蕉 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1971/11/16 メディア: 文庫 また、『野ざらし紀行』の貞享五年冬の句、 市人にいでこれ売らん雪の笠 この句は、『野ざらし紀行』では「市人よ此笠うらふ雪の…

幸田露伴を展開する 11

芭蕉七部集 (岩波文庫 黄 206-4) 作者:松尾 芭蕉,中村 俊定 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1966/03/16 メディア: 文庫 芭蕉と杜国と白芥子との因縁はこれだけではない。貞享四年十月二十五日から翌年、五年四月中旬までの旅を記した『笈の小文』では既…

幸田露伴を展開する 10

芭蕉七部集 (岩波文庫 黄 206-4) 作者:松尾 芭蕉,中村 俊定 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1966/03/16 メディア: 文庫 完本 風狂始末―芭蕉連句評釈 (ちくま学芸文庫) 作者:安東 次男 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2005/03 メディア: 文庫 白芥子…

幸田露伴を展開する 9

芭蕉紀行文集―付嵯峨日記 (岩波文庫 黄 206-1) 作者:松尾 芭蕉 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1971/11/16 メディア: 文庫 ここからこの句に対する露伴の本論がはじまる。先に挙げた加藤楸邨の評釈に明らかなように、「白芥子」の句は、次の句、「牡丹蘂…

幸田露伴を展開する 8

芭蕉語彙 (1984年) 作者:宇田 零雨 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 1984/02 メディア: - 幸田成友著作集〈第1巻〉近世経済史篇 (1972年) 作者:幸田 成友 出版社/メーカー: 中央公論社 発売日: 1972 メディア: - 8 『白芥子句考』は、この句が何年に、ど…

幸田露伴を展開する 7

芭蕉紀行文集―付嵯峨日記 (岩波文庫 黄 206-1) 作者:松尾 芭蕉 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1971/11/16 メディア: 文庫 芭蕉俳句新講〈下巻〉 (1951年) 作者:潁原 退蔵,松尾 芭蕉 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1951/08/10 メディア: 単行本 芭…

幸田露伴を展開する 6

6 坪内逍遙宛ての書簡で賞賛し、晩年には『七部集』と呼ばれる、芭蕉門弟たちの連句、発句を集めたものの評釈にかかり切りになったことからも、露伴の芭蕉に対する敬愛の念はほぼ生涯を一貫して変わらなかったと思われるのだが、以前から私にとって疑問に思…

歩いても歩いても

寝惚先生文集・狂歌才蔵集・四方のあか (新 日本古典文学大系) 作者: 中野三敏,揖斐高,日野龍夫,大田南畝 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1993/07/28 メディア: ハードカバー 購入: 2人 クリック: 4回 この商品を含むブログを見る 鬼貫句選・独ごと (岩…

痩せ我慢の説のために(俳句・短歌・詩)

諸々の事情があって痩せることを考えざるを得なかった。考えてみればずいぶん前のことなので、当てにはならないことだったことがわかるのだが、わりと簡単に半年くらいで十数キロ落としたことが成功体験として記憶されているせいか、いつでも落とせるという…

思い出の西東三鬼句「水枕ガバリと寒い海がある」

西東三鬼全句集 (角川ソフィア文庫) 作者: 西東三鬼 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2017/12/21 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る わたしが読んだことのある西東三鬼の句集は『今日』一冊で、文学全集に収録されているのを読んだ。あとは同じ…

目から鱗が落ちる虚子論――仁平勝『虚子の読み方』

虚子の読み方 作者: 仁平勝 出版社/メーカー: 沖積舎 発売日: 2010/08 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 虚子についてはごく表面的な知識しかもっていない。だが、明治以降の俳人のなかでは好感をもっていて、「流れ行く大根の葉の早さか…

空間のきらめきーー小澤實 『万太郎の一句』

万太郎の一句 作者: 小澤實 出版社/メーカー: ふらんす堂 発売日: 2016/11/01 メディア: オンデマンド (ペーパーバック) この商品を含むブログを見る 巻末の小論で、「淡雪のつもるつもりや砂の上」という句をあげ、小澤實は次のように言う。 「句を読みおろ…

幸堂得知の一句ーー散る花の中にも一本さくらかな

幸堂得知は万延元年(1860年)江戸下谷車坂町に生まれ、大正二年(1913年)根岸に没している。劇評家として活躍した人で、江戸芝居についてもっとも詳しい人物の一人として知られていた。饗庭篁村、森田思軒、須藤南翠、幸田露伴らが参加した「根岸…

山なみを遠望する──加藤郁乎『俳の山なみ』

俳の山なみ 粋で洒脱な風流人帖 作者: 加藤郁乎 出版社/メーカー: 角川学芸出版 発売日: 2009/07/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る もし色々な面でより余裕があったなら、そしてもっと大事なことだが、わたしの俳句に対する情熱がずっと強い…

雉子とかたつぶり--幸田露伴「芭蕉と其角」

芭蕉俳句集 (岩波文庫) 作者: 松尾芭蕉,中村俊定 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1970/03 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 10回 この商品を含むブログ (6件) を見る 蕉門名家句選〈上〉 (岩波文庫) 作者: 堀切実 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: …

・・・羞恥心、いひかへればいろけである。・・・ーー久保田万太郎の俳句

こでまり抄―久保田万太郎句集 (ふらんす堂文庫) 作者: 久保田万太郎,成瀬桜桃子 出版社/メーカー: ふらんす堂 発売日: 1991/10/01 メディア: 文庫 購入: 4人 クリック: 17回 この商品を含むブログ (16件) を見る 久保田万太郎は、もっぱら東京下町の情緒を描…

お手本と蝶つがいーー内田百閒『百鬼園俳句帖』

百鬼園俳句帖―内田百けん集成〈18〉 (ちくま文庫) 作者: 内田百けん 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2004/03/01 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 1回 この商品を含むブログ (8件) を見る 作品抄出 三十句 水ぬるむ杭を離るゝ芥かな 『百鬼園俳句帖』…

春の世界と世界の春ーー佐藤清美『句集宙ノ音』

宙ノ音 作者: 佐藤清美 出版社/メーカー: 六花書林 発売日: 2018/10/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 幸田露伴は芭蕉とその朋輩、門人たちが詠んだ歌仙を中心として成立した『七部集』を評釈した。俳諧は、一方では和歌の伝統を継承し、他方…

高柳重信の一句

秋さびしああこりやこりやとうたへども おそらく他の『鬣』同人の多くと大きく異なることのひとつは、私がついぞ高柳重信にイカれたことがないということにあろう。嫌いとまではいかないが、平岡正明が言うように、思想はいくらでも変わりうるが、趣味は絶対…

道楽者の世界像――暮尾淳『宿借り』書評

宿借り―句集 (風の花冠文庫) 作者: 暮尾淳 出版社/メーカー: 鬣の会 発売日: 2012/05 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 三道楽(どら)煩悩といえば、男の欲望が向かう三つの対象、酒、女、博打のことを指す。もともと、道楽というのは特にそうした…

一句燦々

二階からひとりで見たる猫の恋 釣壺 加藤郁也編著による『近世滑稽俳句大全』(読売新聞社)で見つけた句である。貞門から幕末まで、広く六千句以上を集めたこの本のなかでもっとも印象に残ったものなので、句そのもののできなどを越えて、よほどどこか感応…

目から鱗が落ちる虚子論――仁平勝『虚子の読み方』

虚子の読み方 作者: 仁平勝 出版社/メーカー: 沖積舎 発売日: 2010/08 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 虚子についてはごく表面的な知識しかもっていない。だが、明治以降の俳人のなかでは好感をもっていて、「流れ行く大根の葉の早さか…

八幡城太郎と俳誌「青芝」の人びと

というわけで町田市民文学館に出かけた。会場は二階の一画、大きさは小学校の教室よりも狭いくらいで、見るだけなら数分で済んでしまう。展示は五つのブロックに別れている。 1.八幡城太郎の俳句活動――「青芝」創刊以前 2.二つの原稿――島尾敏雄「噴水」…

俳句の上手さについて――林桂『俳句・彼方への現在』書評

『俳句・彼方への現在』を読んで興味深かったのは、しばしば俳句の上手さについて言及されていることだった。実は、私が俳句を読んでいて一番わかりにくいのがこの上手さということなのである。具体例は忘れてしまったが、久保田万太郎が宗匠の句会で、一語…

演歌と置き忘れ——伊藤信吉『たそがれのうた』(風の花冠文庫)書評

片町や夏ゆくころの撥の音 和菓子、駄菓子。のうぜんかづらの花の店 すすき枯れし斜面草地やひるの月 ふるさとは風に吹かるるわらべ唄。 ヒル花火あなたこなたにヒバリ鳴く 手のひらにたたみこむほどにや余呉の秋 伊藤信吉の句には、歳時記を開かなければわ…