雑記

一言一話 147

古代人と夢 (平凡社ライブラリー) 作者:西郷 信綱 平凡社 Amazon 古代人にとっての夢 フロイトやユング以後の現代人は夢を、意識の底に沈んだ欲望や衝動、あるいは集団無意識のあらわれと考える。この考えが学問的に妥当であるかどうかは難しい問題で、私に…

一言一話 146

幕末奇談 (中公文庫) 作者:子母澤 寛 中央公論新社 Amazon 船に酔わない法 爾来、船に酔わない法という奴を、いろいろ調べて見てるんですが、新しいのは別として、先頃ひょっこり眼についた文化七年版の「旅行用心集」というのを見て、こいつには思わず、頭…

一言一話 145

汚れた顔の天使 ジェームズ・キャグニー自伝 作者:ジェームズ・キャグニー,山田宏一 出帆新社 Amazon アステアが語ったこと 「芸術って、なんのことだ?」と彼は言った。「芸術ってのは、わたしの足だ。それは、ただただ、きびしい労働だ。訓練だ。わたしは…

一言一話 144

汚れた顔の天使 ジェームズ・キャグニー自伝 作者:ジェームズ・キャグニー,山田宏一 出帆新社 Amazon バカバカしさ わたしにとって、ショービジネスの本質は、変化であり、であり、そして、もうひとつ、非常に忘れられやすく、ほとんど話題にされない要素だ…

一言一話 135

アービング・バビット。 ロマン主義のノスタルジア ロマン主義のノスタルジアは、「ホームシック」ではなく、正確に言うと、家郷を離れようとする欲望である。ホメロスのオデュッセウスは本当のノスタルジアに苦しんでいた。他方、テニスンのユリシーズが家…

一言一話 132

食いしん坊〈1〉 (朝日文庫) 作者:小島 政二郎 朝日新聞社 Amazon 東京の鰻屋 ウナギの好きな人は相当多い。ウナギが好きだという人に逢うと、私は口癖のように、 「どこのウナギがお好きですか」 そう言って聞く。すると、十人が十人、竹葉だとか、飯倉の野…

一言一話 128

食いしん坊〈1〉 (朝日文庫) 作者:小島 政二郎 朝日新聞社 Amazon 原稿を書く速さ遅さ 芥川さんが一ト晩苦吟してやっと二枚、鈴木三重吉の「桑の実」の中に、梅雨になる頃の描写があるが、ホンの五六行の文章を書くのに、書いては消し、書いては消し、同じとこ…

一言一話 127

食いしん坊〈1〉 (朝日文庫) 作者:小島 政二郎 朝日新聞社 Amazon 菊正宗 さて、菊正宗だが、酒飲みは異口同音に菊正がいゝと言う。私の知っているだけでも、鈴木三重吉、水上滝太郎、室生犀星などは菊正党で、戦争前まで、銀座の鉢巻岡田、日本橋の灘屋の二…

一言一話 126

食いしん坊〈1〉 (朝日文庫) 作者:小島 政二郎 朝日新聞社 Amazon 芥川龍之介と砕氷機 いつかなど、本郷の切通しを歩いていると、「砕氷機」という大きな看板が目に付いた。すると、芥川さんが、 「砕氷機というのはおかしい」 と言い出した。 「おかしいことは…

一言一話 125

食いしん坊〈1〉 (朝日文庫) 作者:小島 政二郎 朝日新聞社 Amazon 横光利一伝授の雑煮 横光伝授の食べ物のうち、未だにわが家で愛用している一つに、正月の横光雑煮がある。それは、まずお餅をそのままゴマの油でちょいと揚げて、それを雑煮汁の中で少し煮て…

一言一話 124

食いしん坊 1 作者:小島政二郎 文化出版局 Amazon 東京の菓子――越後屋 食べ物は、東京より上方の方がうまい。菓子も然り。しかし、大地震前までは――大負けに負けて戦争前までは、東京にもうまい菓子屋があった。例えば、本所一つ目の越後屋、日本橋の三橋堂…

一言一話 119

桑原武夫全集〈第6巻〉 (1968年) 作者:桑原 武夫 朝日新聞社 Amazon 学問を支えるもの 明治の学者とそれ以後の学者との断絶についての柳田國男の説 それは正しい、自分も君と全く同感だ、と言下に答えられたので、それではその理由は何でしょうか、と重ねて…

一言一話 107

フランツ・カフカ (1955年) 作者:マックス・ブロート Amazon すばらしい夢 カフカは私に、「一隻の小舟に乗って、水のない河床を走ってゆく」「すばらしい夢」を物語った。 すばらしい。

一言一話 106

フランツ・カフカ (1955年) 作者:マックス・ブロート Amazon どうか私を夢だと思ってください ある日の午後カフカが私の家に来て(私は当時まだ両親のところに住んでいた)、部屋に入る足音でソファーに寝ている私の父を起してしまった。カフカは言いわけす…

一言一話 105

フランツ・カフカ (1955年) 作者:マックス・ブロート Amazon カフカと逆説 彼は、万事世間なみの考え方でやって行くべきだという偏見も、なんでもかんでも世間の考え方に反抗するのだという偏見も、二つながら持ちあわせていなかった。カフカでなによりも気…

一言一話 104

フランツ・カフカ (1955年) 作者:マックス・ブロート Amazon カフカの徹底癖 どこまでも描写の範囲をひろげて行かなければやまなかったカフカの徹底癖は、実生活にも遺憾なく発揮された。彼はよく時間に遅れて来たが、――だらしがなくて遅れるのではなく、来…

一言一話 103

フランツ・カフカ (1955年) 作者:マックス・ブロート Amazon カフカの意味 「カフカ」(kafka)という姓は、正しくはkavkaと書くが、元来チェコ系の名前で、「小烏」という意味である。 私の不運な黒いカラスよ、みたいなことを日記で書いていたように記憶し…

正岡子規と瓢箪

考えてみると、物心ついてからずっと地平線の先には山並みがある。閉塞感、あるいは守られている感じを受けたことは特にない。寒い地方ではないので、真冬にでもならなければ雪をかぶることはないけれど、季節ごとに色合いを変える。自宅と山のあいだには町…

痩せ我慢の説のために(俳句・短歌・詩)

諸々の事情があって痩せることを考えざるを得なかった。考えてみればずいぶん前のことなので、当てにはならないことだったことがわかるのだが、わりと簡単に半年くらいで十数キロ落としたことが成功体験として記憶されているせいか、いつでも落とせるという…

SFというと、物理学やそれに関係した工業的テクノロジーから想像力をはばたかせるものが多く、

ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF) 作者: パオロ・バチガルピ,鈴木康士,田中一江,金子浩 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2011/05/20 メディア: 文庫 購入: 10人 クリック: 629回 この商品を含むブログ (124件) を見る ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF) …

田中王堂(慶応3年~昭和7年)に『書斎より街頭に』という著作があるが、

サン★ロレンツォの夜 [DVD] 出版社/メーカー: ポニーキャニオン 発売日: 2015/10/21 メディア: DVD この商品を含むブログを見る 田中王堂(慶応3年~昭和7年)に『書斎より街頭に』という著作があるが、寺山修司の『書を捨てよ、町に出よう』はそこから来…

アキ・カウリスマキの『ル・アーヴルの靴みがき』(2011年)は、カウリスマキには珍しく、

ル・アーヴルの靴みがき [DVD] 出版社/メーカー: キングレコード 発売日: 2017/08/02 メディア: DVD この商品を含むブログを見る アキ・カウリスマキの『ル・アーヴルの靴みがき』(2011年)は、カウリスマキには珍しく、不法移民というアクチュアルな話…

ルカ・ガァダニーノ『サスペリア』(2018年)、冒頭の夜の豪雨の場面から、

サスペリア 4K レストア版 Ultra HD Blu-ray 通常版 出版社/メーカー: Happinet 発売日: 2019/07/19 メディア: Blu-ray この商品を含むブログを見る ルカ・ガァダニーノ『サスペリア』(2018年)。冒頭の夜の豪雨の場面から、この世ならぬところに連れて…

ある婚約の風景

医療ドラマが好きで、ちょっと自慢なのは初期メンバーがすべていなくなり、ぐずぐずになってしまった『ER』をすべて見たことで、もうちょっと自慢なのは、ハウス(ヒュー・ローリー)という難病にしか興味をもたない狷介な医師のキャラクターにしか牽引力…