2020-01-01から1年間の記事一覧

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 82

VI こうした七つの職務、或いは「義務」は、動機づけの観点を含んではいるが、行為へ導く<動機>よりもむしろ<行為>についての名称である。人は、そう「すべき」だと感じるが故に統治することもあり得る。或いは、部下に自分の意志を押しつけたいという…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 81

V 動機の、或はむしろ「義務」の、「職務」に関する七つの包括的な範疇についてはこう言える。つまり、それはすべての領域を蔽うことを意図しているが、相互に排除しあうわけではない。個々の行為は、分割そのものが論理的に背反しあうわけではないのと同じ…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 80

IV テクノロジーの観点から「世界」を考えるとき、次の問題はこうだった。<この観点から>動機づけを最も最適に範疇わけし、分類するにはどうしたらいいか。テクノロジーにある顕著な要素が我々に手がかりを与えてくれる。<使用>という要素である。例え…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 79

III ここで、ある挿話をつけ加えておこう。まず第一に注目すべきは、「道具使用」や「道具製作」から「テクノロジー」へと移行することで、我々は「普遍」や「一般」から「世界」へと移行した。(つまり、我々は動機についての「巨視的な」観点と<特殊な…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 78

II 第一に、<人間としての種的な>要素があるのは明らかである。この世界会議がどのようなものであろうと、それは言葉を使用する(シンボルを使用する)動物の集まりであり、様々な場所から集ってはいるが、他の動物と最も決定的に区別される属性、つまり…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 77

. 補遺 七つの職務 I 動機づけの理論の可能性と、それに応じた動機を定義し、分類するやり方には終わりがない。わが英雄はなんらかの特殊な宗教、人種、国民性、社会的階級、歴史的伝統、職業、パーソナリティ・タイプ、腺病質、老練な競争者によってもたら…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 76

第二版の後書き 恐らく、この本が最初に出版されたときの著者の観点と現在の観点との間の主要な姿勢の変化には政治的対称の問題が関わっている。政治的対称は、現在ではかつてほど魅力があるものとは思われていない。事実、政治体制のなかでの相互関係の緩さ…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 75

. 結論 最後に、主要な点を簡単にまとめておこう。 名前には行為と命令とが含まれている。(ピアジェが示したところによれば、子供は木片を取り上げて、「これはボードだ」と言う。次に「さあ、海を渡るぞ」と言いながら木片を動かす。時には、名前と命令とが…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 74

... 超越 Transcendence ある観点から見れば、AとBは「対立」している。「超越」によって意味されているのは、対立がなくなるような別の観点の採用である。現在のところ、それに最も近いものとして可能なのは、言葉によるものである。実際のところは、そう…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 73

... 権威シンボル Symbols of Authority 正直なところ曖昧な語である。明確な境界をもって方向を指し示しているというより、なんらかの方向をもって指し示すこと自体をあらわそうとしている。支配者、法廷、議会、法律、教育者、警察、およびこうしたものと…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 72

... シンボルの合併 Symbolic Mergers 超越には隠れた「斟酌」が存在する――しかし、この要因が我々の言葉の背後にあって認めることが困難である。例えば、「すべては物質的だ」と言う男は、考えられる限りの保留を付しているかもしれない。また、「すべては…

挫折と充足のアンチノミーーーバルザック「あら皮」(1831年)

あら皮 〔欲望の哲学〕 (バルザック「人間喜劇」セレクション(全13巻・別巻二) 10) 作者:バルザック,Balzac 発売日: 2000/03/30 メディア: 単行本 周囲のものに「なんともいえない恐ろしさ」をおぼえさせた青年、ラファエルが賭博場に入ってきて、一枚の金…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 71

... シンボルの盗みあい Stealing Back and Forth of Symbols 王の神聖な権利は、最初神権政治の権威と戦う世俗的な利害のために援用された。「民衆」の世俗的な利害を代表するために、教会の権威ではなく、神が王を任命するのだと主張される。後に、教会が…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 70

... 世俗的祈り――或はその拡張:世俗的祈りによる性格構築 Secular Prayer--or,extended:Character-building by Secular Prayer 世俗的祈りは、それを排除する工夫を提案できると考える者によって、通常「言葉の魔術」と呼ばれている。常に印象づけられるの…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 69

... 党派 Sect 「窮地に追い込まれる」危険に直面し、新たな集団を形成することでそれに対抗しようする者たち。その共同性によって、新たで確かな作戦基盤が与えられ、敵対者から権威シンボルとして認められているものを盗むために出撃する。党派は、排除と…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 68

... 救済の装置 Salvation Device 時折り、ある種の救済の装置が累積された効率性とともに組織化されることがある。宗教が権威をもった時期には、聖職者の形を取る傾向にはあるが、この装置は聖職者の魔術に限定されるものではない。天気についての話がそう…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 67

... 再生の儀式 Rituals of Rebirth 極端に強調点が変わるような時期には特に、芸術にはアイデンティティの変化を描くものが見いだされるだろう。しかしながら、より安定した時代には、個人の成熟はある種の「更年期」としてあらわれるので、同じ過程は芸術…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 66

... 世界の再所有 Repossess the World 想像的なものが官僚化されるに従い、官僚体制そのものがそれ自身の新たな問題をもたらす。かくして、現代のビジネスの官僚的な複雑さは、複雑なファイルシステムを必要とする。すべての才能をこうした付帯的な副産物(…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 65

... 悪の問題 Problem of Evil あらゆる政策は、より少ない悪を目指す政策である。かくして、宗教的なアウグスティヌスと無神論のジェファーソンとは、一人が政府を人間の失墜に対する罰と説明し、一人が必要な悪と呼ぶことで結びつく。我々の用語で言えば、…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 64

... 不調和による遠近法 Perspective by Incongruity 言葉による「原子破壊」で状況を測る方法。つまり、言葉は慣習によってあるカテゴリーに属している――合理的な企図によってそれをねじ曲げ、隠喩的にそれを異なったカテゴリーに適用する。 実業界によって…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 63

... ご都合主義 Opportunism 十分な合理性も、現実的なものにするための洗練された方法論もない決疑論的拡張。壁際に立たされることでもある。「世俗的祈り」の低次の形式は、ある党派がその党の原理を「売り渡す」ことを余儀なくされ、できるだけ早く合理化…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 62

... 新マルサス原理 Neo-Malthusian Principle 物理的限界に進む<人間の>増加ではなく、物理的限界に進む<習慣>の増加を示す。ある状況にはそれに関わる<可能な>ゆるみが存在する(それは別の角度から見れば、<必要な>ゆるみと分析することが可能であ…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 61

... 語義学的な Lexicological ライップニッツは、哲学は現実には、定義の連続であると示唆した。法廷での慣習が思想家たちを刺激して、その大系を「議論」としてあらわさせるようにした。実際のところは、それは単に<相互に関係する用語の集合>である。本…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 60

... 合法性 Legality 理論的に言えば、我々は習慣から始める。習慣の有効な規範化として法律を得る。法の抽象的な源は言葉のなかに含まれている。抽象は死んだメタファーだからである。死んだメタファーを混ぜ合わせることで抽象の上に抽象を重ねる。思想家…

情動の両価性ーー幸田文『猿のこしかけ』(昭和32年)

猿のこしかけ (講談社文芸文庫) 作者:幸田 文 発売日: 1999/08/10 メディア: 文庫 立川談志ひとり会 落語CD全集 第11集「あくび指南」「雑俳」「妲己のお百」 アーティスト:五代目 立川談志 発売日: 2006/02/01 メディア: CD 『妲己のお百』は元々は講談の怪…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 59

... 形象 Imagery キャロライン・スパージョンの『シェイクスピアの形象』を読む喜びについては既に述べた。確かに、詩にまつわる問題について我々の尊敬するM・D・ザベル氏はこの本について意見の保留を表明している。彼は形象の分析が幾分ぞんざいだとし…

断片蒐集 53 自己意識と原罪

thomas aitizer,The Genesis of God 統合された「私」というのは、ユートピアでしかない。分裂した私も病的になると厄介だろうが、もともと私には充填されることのない穴が空いている。 ナルシシズムとユートピア的「私」 神と罪との関係 アウグスティヌスは…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 58

... 同一性、同一化 Identity,Identification 我々が関わってきたすべての事柄は同一性の問題に行き着く。ブルジョア的自然主義の最も素朴なあらわれは、「個人」と「環境」を鈍感に区別し、自動的に、個人の「アイデンティティ」を私的な、彼のみに固有なも…

断片蒐集 52 始まりと終わりの神秘

thomas aitizer,The Genesis of God 創世記と黙示録が揃っているというのは、考えてみると不思議な宗教である。生きているあらゆる人間が物語の登場人物たり得るわけである。 ヘーゲル、マルクス、キルケゴール マルクスとキルケゴールはヘーゲル体系の真の…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 57

... 「いずれにしても私の勝ち」 事態がある方向に向かえば体系的にそれを説明し、事態がまったく反対の方向に向かっても体系的に説明するという仕掛けのこと。最初にこの図式に突き当たったとき、我々は議論の信用度を試す方法を見つけたと思った。ある哲学…