2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

断片蒐集 11 アドルノ

美の理論 新装版 作者:T・W・アドルノ 発売日: 2019/12/11 メディア: 単行本 力業としての芸術を上演すること バッハ 芸術作品の上演は力業を芸術作品のうちに発見し、それによって不可能なものの可能性が隠されている零点を見出さなければならない。作品は…

断片蒐集 10 アドルノ

美の理論 新装版 作者:T・W・アドルノ 発売日: 2019/12/11 メディア: 単行本 力業としての芸術 芸術は経験から抜け出すものでありながら、形式というユートピアのうちでのしかかるその経験の重みに屈服する。さもなければ芸術の完全性は無に等しくなる。統合…

白銀の図書館 18 小説の唄い調子ーー野間宏『肉体は濡れて』(1947年)

野間宏作品集〈1〉暗い絵 崩解感覚 作者:野間 宏 発売日: 1987/11/06 メディア: 単行本 野間宏はほとんど無縁に過ごした作家のひとりで、大学生のころに『暗い絵』(1946年)を読んだくらいのもので、冒頭からレンブラントの絵画の描写が続くことは覚え…

断片蒐集 9 アドルノ

美の理論 新装版 作者:T・W・アドルノ 発売日: 2019/12/11 メディア: 単行本 前衛と象徴 ほかならぬ急進的な芸術はリアリズムの欠陥に陥ることを拒む反面、象徴に対しても緊張した関係を持つ。新しい芸術における象徴、あるいは文章論的に言うなら隠喩は象徴…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 32

ヨーロッパでは、「生活」の最低基準と異なる人々の「再教育」が貧弱な道徳的訓戒になることはなかった。例えば、文盲が読み書きの能力を得ることは、それにふさわしい制度内の一員として「利用」されうるという想像力の働きを伴っている。イギリスで盛んに…

断片蒐集 8 アドルノ

美の理論 新装版 作者:T・W・アドルノ 発売日: 2019/12/11 メディア: 単行本 芸術と自然美 芸術作品をして芸術作品たらしめている即自存在とは、現実的なものの模倣ではなく、いまだまったく存在することがない即自存在の先取り、つまり未知のものであって、…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 31

第四章 素朴資本主義 我々はここで、プロテスタントの否定的で、分離的な特徴がなんとか肯定的なものとなり、古い異常性が新たな規範となる時期にまでたどり着いた。新たな野心を「民主化する」ための長い戦いには、強い経済的衝迫のもと、相当の教導が必要…

断片蒐集 7 アドルノ

美の理論 新装版 作者:T・W・アドルノ 発売日: 2019/12/11 メディア: 単行本 自然美とアレゴリー的意図 自然美は自らが解くことなしに示すアレゴリー的意図とともに、つまり意味ではあっても指示的な言語の場合とは異って、自己を対象化することがない意味と…

断片蒐集 6 アドルノ

美の理論 新装版 作者:T・W・アドルノ 発売日: 2019/12/11 メディア: 単行本 美と分析 すべての美は分析を加えることによって徐々に一貫して解明されて行くが、分析はこうした美を再び本能的なものとして分類することになるし、もし分析に本能的なものという…

黄昏の領域 4 重層的リアリズムーーデヴィッド・サイモン『プロット・アゲンスト・アメリカ』(2020年)

解禁!予告編 メディア: Prime Video Treme: Complete Series [Blu-ray] [Import] メディア: Blu-ray HBOのドラマ。 フィリップ・ロスは、ヘンリー・ミラーとともに、私がはじめて好きになったアメリカの作家で、もっともずいぶん昔のことで、ヘンリー・ミラ…

断片蒐集 5 アドルノ

美の理論 新装版 作者:T・W・アドルノ 発売日: 2019/12/11 メディア: 単行本 芸術の残酷さ 醜は芸術に敵対的なものであるが、芸術の概念を拡大して理想の概念を乗りこえさせる芸術の動因として、芸術に敵対する。芸術における醜は芸術の理想に奉仕するものに…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 30

第三章 プロテスタントの転調 第三幕は「急展開ペリペテイア」であり、プロットの方向が根本的に変わった。著しく目立つ転調であり、歴史的ドラマの「分水嶺」である。ルネサンスと宗教改革。この時点において、純思想的なものと経済的達成の双方において否…

断片蒐集 4 アドルノ

美の理論 新装版 作者:T・W・アドルノ 発売日: 2019/12/11 メディア: 単行本 醜い景観 市民意識は産業によって掘り返された景観を醜いものときめつけるが、こうした判断は素朴なものであるとしても、一つの関係を的確に捉えたものと言ってよい。つまり、自然…

断片蒐集 3 アドルノ

美の理論 新装版 作者:T・W・アドルノ 発売日: 2019/12/11 メディア: 単行本 複製技術と芸術 洞窟の壁に動物の絵を描く手と、無数の場所に同時に無数の写しを出現させることができるカメラとのあいだには、明らかに質的飛躍がある。だが直接的に見られたもの…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 29

第二章 中世の総合 生において望まれない利益などない。誰でも、どんな立場にいようと、課外授業を受けねばならないときはある。人間を逆境に満足するようにし、特権は、特権をもつ者が特権という障害を乗り越えるためにある種の努力をできなければ、不毛な…

断片蒐集 2 アドルノ

美の理論 新装版 作者:T・W・アドルノ 発売日: 2020/07/03 メディア: Kindle版 文学の現実暴露 文学は後退して何一つ容赦することがない現実暴露の過程となり、詩的なものという概念はこの過程によって台無しにされた。ベケットの作品の抗い難い魅力を作り…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 28

ネロのような人物に向けられた道徳的非難の多くは、こうした争いから生じたものだと思われる。ローマの建築学的発展に関する帝国の政策は、不動産への投機家の理想と完全に一致するものではなかった。この怒りに満ちた階級に雇われ、その文体を駆使した文学…

断片蒐集1 Parveen Adams

The Emptiness of the Image: Psychoanalysis and Sexual Differences (English Edition) 作者:Adams, Parveen 発売日: 2013/04/15 メディア: Kindle版 江戸時代の随筆を読むと、とにかくこまめに筆を走らせ、文章を書き写していることにびっくりする。書誌…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 27

第一幕はこの問題に直面する。問題は可動と定着との比率において先鋭化するように思われる。ヘレニズムの衰退期における論争的な発言は可動的なものだった。それが終りに向かい、帝国の権威への転換がなされたときも可動的だった。しかし、それは征服者が通…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 26

第二部 歴史の曲線 第一章 キリスト教福音主義 前の章では、多様な詩的カテゴリーを主な例証として、「受容と拒絶の枠組み」を論じた。ここでは、最も広範囲にわたる集団的活動によって発展させられてきた「集団的詩」に注意を向けよう。我々が注目するのは…

黄昏の領域 3 日常と怪異の根拠ーーリチャード・プライス『アウトサイダー』(2020年)

解禁!予告編 メディア: Prime Video スティーヴン・キング原作。初期のキング作品は多分、ほとんど読んでいて、なかでも、恩田陸の『夜のピクニック』の下敷きになった『死のロングウォーク』や『痩せゆく男』などのリチャード・バックマン名義の作品が大好…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 25

第四章 結論 我々はこれまでのところで、ものを書き考えるときの主要な要因について示そうとしてきた。詩人や思想家が、自分の観点に課せられた制限のなかで、生の複雑な諸関係を組織化するときに頼らなければならない口実を明らかにしようとしてきた。彼は…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 24

拒絶の失敗 我々の分析した多様な詩的カテゴリーは、精神が状況を名づけ、直面する際のいくつかの主要な心理学的仕掛けを示した。それは、原始的福音主義(ヘレニズムの衰退のなか起こった)、中世神権主義、プロテスタンティズム、資本主義、社会主義と大ざ…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 23

第三章 受容の枠組みの運命 遊び、愛、戦争、仕事――これらは人間が夢中になるものである。それら全てを一緒にし、それぞれの分担を「割り当てる」のが」宗教で、超越と同じような役割を果たす。 矛盾に直面する者がいるとする。矛盾が解決可能なら、それを解…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 22

超越の他の例 実のところ、この仕事は捕まえどころがない。我々は読者にそれがなにかの痕跡と考えることができないか、問いかけるしかない。明確なものをもって説得するというよりむしろ、問題を提示しようとしている。強調されているのは、思考において基本…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 21

エリオットの教訓的超越 我々はエリオットの『寺院の殺人』に言及した。それもまた、教訓的-感傷的-超越的な結合を示している。エリオットの心理学を試してみよう。 詩人トーマスによる聖トーマスについての作品で、セントルイスにはセントルイスの少年が…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 20

ヘーシオドス 仕事と日 (岩波文庫) 作者:ヘーシオドス 発売日: 1986/05/16 メディア: 文庫 ヘシオドスの教訓的「超越」 この古ギリシャ詩人の挽歌は、ホメロスの「甘美な空気」の反面である。ホメロスの「受容的」リアリズムと対照的に、ヘシオドスのリアリ…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 19

教訓 多くの人が指摘したように、我々もまた、神秘-グロテスク崇拝においては、受容の枠組みにおいて受動性がいかに完全な形で働いているかを指摘した。能動的な枠組みに相当するのは教訓(プロパガンダ、レトリック、「応用」芸術)である。 歴史の自発的…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 18

修道院制度と変移 修道院制度は変移的な思考の表現に特別な位置を占めている。修道院制度が誠実なものであり、神権政治のビジネスマンたちの一機会までに堕落していなかったときには、危機的な地点(つまり、変移の地点)において仲間を請じ入れた。こうした…

黄昏の領域 2 革命の根拠ーージョナサン・ノーラン、リサ・ジョイ『ウエストワールド』シーズン1〜3(2016〜2020年)

1分でわかるウエストワールド メディア: Prime Video このドラマのもとになった原作者のマイケル・クライトンが監督も務めた、1973年の『ウエストワールド』は黄土色のシャツを着て、黒か濃紺の帽子をかぶったカーボーイ姿のユル・ブリンナーと何か静か…