2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ブラッドリー『仮象と実在』 19

(時間を別のやり方で捉えても、「いま」は自己矛盾である。) しかし、我々は空間的形式は時間に本質的なものではないことを正当にも述べたのであるから、公正な吟味をすれば、その点で誤ることはあるまい。そこで、時間をあるがままに、外からなにかをつけ…

ブラッドリー『仮象と実在』 18

(通常考えられている時間も同じ欠点をもつ。) 時間を心理学的に説明しようとする試みは、結局のところ、時間を無時間的な精神から生じたものだと示そうとする。しかし、空間での結論と同じ理由、更にそれ以上に重要な点から、そうした試みについて考えるこ…

ブラッドリー『仮象と実在』 17

(その他の内容との関連は理解しがたい。) 我々が明らかにした矛盾にこれ以上関わっていても得るところはないだろう。一度原理を把握してしまえば、読者自身で細目をたどることができる。補足的な難点に進むことにしよう。空の空間--空間以上のなんらかの…

ブラッドリー『仮象と実在』 16

(空間は関係であり、関係でないために不整合である。) それでは、空間や拡がりを単にそのものとして捉えるとき、それが矛盾をきたすかどうか調べてみよう。読者は、空間の連続性と不連続性から生じる難点については知悉されているだろう。空間に限りがない…

五大洋発掘記 2 ジャン・ロラン『仮面物語集』

仮面物語集 (1984年) (フランス世紀末文学叢書〈7〉) 作者:ジャン・ロラン メディア: - 小浜俊郎訳、国書刊行会、「フランス世紀末文学叢書」の第七巻。 1984年。 ジャン・ロランは1855年ノルマンディーの港フェカンに生まれ、1906年に51歳で…

ブラッドリー『仮象と実在』 15

第四章 空間と時間 (その心理学的起源を論じるのは的外れである。) この章の対象とするところは、空間や時間の本性を十分に議論しようとするには程遠い。それらを仮象と見なすことへの主な弁明を述べるだけで十分だろう。その特徴に、なぜ我々は実在、ある…

五大洋発掘記 1 谷川晃一『冗句パノラマ館』

冗句パノラマ館―アート鑑賞自由自在 (1983年) 作者:谷川 晃一 メディア: - 沖積舎 1983年 最近積み重なった古本を崩さなければならない事情があって、山のなかには当然買っただけで読んでいなかった本が発掘されるわけで、題して「五大洋発掘記」。あく…

ブラッドリー『仮象と実在』 14

(III.性質をもつ関係、或いは性質のない関係、いずれも理解しがたい。) 3.関係の面からも同様のジレンマに簡単に達することができる。関係は諸性質があってもなくても理解できない。第一に、項のない関係は単なる言葉の無駄に思える。項は関係を越えたな…

ブラッドリー『仮象と実在』 13

(性質の関係は内的矛盾を引き起こす。) かくして、諸性質は存在せねばならず、同時に関係していなければならない。それぞれの性質の内部には多様性が存在する。それぞれが関係を支え、関係によってつくられるという二重の性格をもっている。それは同時に条…

ブラッドリー『仮象と実在』 12

(II.関係のある性質は理解しがたい。性質は関係に分解することはできない。) 2.諸性質は、関係なしには、理解できる意味をもたないことを我々は見いだした。不運なことに、両者が共にあっても同様に理解できない。第一に、諸性質は完全に関係のうちに溶…

ブラッドリー『仮象と実在』 11

(関係のない性質はそもそも存在しない。) 更に進むこともできる。過程を無視した事物が擁護しがたいだけでなく--たとえうっかり真理に入り込むようなことがあるにしても--誤謬をもたらす証拠がある。というのも、結果は過程のうちに得た性格をもってい…

ブラッドリー『仮象と実在』 10

(関係のない性質は正当なものとして得ることはできない。) 次のような答えを想定してみよう。性質は関係と離れて見いだすことはできないが、それはそれらが異なった存在であることを否定し去る証明ではない。というのも、我々はそれらを区別し、別々に考える…

ブラッドリー『仮象と実在』 9

第三章 関係と性質 前章で議論された問題は、実際は、性質と関係の本性をめぐる問題だったことが明らかになったに違いない。読者は、我々が辿りつく結論を既に予測しているだろう。与えられた事実において諸関係や諸性質が配されるのは現実的には必然だが、…

ブラッドリー『仮象と実在』 8

第二章 実体と属性 (内属の問題。事物とその性質との関係は理解しがたい。) 一次性質と二次性質との区別が我々をさほど先まで進めてくれないことを見てきた。そのことはおき、もう一度我々が経験するところにまっすぐ立ち戻り、別の方法でそれを理解できる…

ブラッドリー『仮象と実在』 7

(一次性質は都合のいい作り事でしかない。) 「なんの正当性もなしに」とはいっても、と唯物論者は答えるかもしれない、「科学的手続きにおいて、二次性質は一次性質の結果であることは説明されている。それゆえ、明らかに、一次性質が独立しており、先行し…

ブラッドリー『仮象と実在』 6

(しかし、一次性質は独立した存在ではない。) だが、それらは一次性質の仮象であり、一次性質が実在なのだろうか。議論の積極的な面は、拡がりに事物の本質があるということだった。この結論が真であるかどうか問う必要がある。この教義は、もちろん、唯物…

ブラッドリー『仮象と実在』 5

[非実在としてあらわれる二次性質] 詳細に述べるまでの問題ではない。ものには色があるが、誰の眼にとっても同じように色づけられてはいない。数人の眼を除いてはまったく色と認められない場合もある。そのとき、色はあるのだろうか、ないのだろうか。性質…

ブラッドリー『仮象と実在』 4

第一部 仮象 第一章 一次性質と二次性質 [一次性質だけを実在ととる誤りを説明しようとする試み] 精神は、早くから、多くの錯覚と間違いを強いられている。我々が普遍的なものとして理解しようとする諸観念は、我々の誤りを正す試みと考えられる。第一部に…

ブラッドリー『仮象と実在』 3

(形而上学は擁護しがたいものでもない。) しかし、真剣に成功を期待するということになると、私の答えは、もちろん、否である。つまり、私は満足のいく知識が可能だとは思っていない。実在に関してどれだけのことが確かめられるかはこの本で論じることにな…

ブラッドリー『仮象と実在』 2

(形而上学は不可能ではない) (a)形而上学的知識がまったく不可能だと証明しようとしている者は、ここでなんらかの答えを求める資格はない。本論に当たって、自分の信念を確かめて貰うしかない。恐らく彼は自分でも気づかぬうちに、闘技場に入ってしまっ…

ブラッドリー『仮象と実在』1

《前置き。フランシス・ハーバート・ブラッドリーは1846年に生まれ、1924年に死んだイギリスの哲学者である。イギリスでは一時期大きな影響力をもったが、日本にはほとんど紹介されていない。ちなみに、弟のA・C・ブラッドリーはシェイクスピアの学…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 91

.. 追記 『恒久性と変化』と『歴史への姿勢』という一組の著作に関して締めくくりの言葉を述べるにあたり、理論的な注釈が物語へと変わることが幾度かあった。今度のこともそうである。ライマン教授は私の質問に対して答えを送ってくれたが、この後記で彼の…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 90

.. 部分的な撤回を伴った追加 私の初期の著作『反対陳述』に収められたエッセイ「心理学と形式」の脚注を論じようと思うが、それは『恒久性と変化』及び『歴史への姿勢』の後記で芸術的個人的とテクノロジー的道具的との区別に関してとった私の姿勢を強く伝…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 89

事態を極端にすることでプロットを動機づける劇中の登場人物については、私は多くのことを語ってきた。『歴史への姿勢』の「中枢用語の辞書」でなされたと<私が>考えていることを示せば充分だろう。私はそれを「受容の喜劇的枠組み」を体現した人間関係の…

ケネス・・バーク『歴史への姿勢』 88

『歴史への姿勢』の喜劇的枠組みに関する企図の多くは、そうした安売り、または叩き売りとさえ言えるもののなかでくつろぐことになろう。しかしまた、不調和な遠近法、「想像的なものの官僚化」を巡って「放射される」この本の「中枢語」とともに、企図にあ…

残酷な対価ーーイ・チャンドン『バーニング 劇場版』

バーニング 劇場版(字幕版) 発売日: 2019/08/07 メディア: Prime Video 元日にイ・チャンドンの『バーニング 劇場版』(2018年)をみる。イ・チャンドンは『シークレット・サンシャイン』(2007年)以来で、この映画は非常に面白かったのだが、見直…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 87

手術される病院で、「ヘローネがまず最初に印象づけられたのは、自分の置かれた状況の極端な<物質性>だった」。それはプライバシーの侵害から始まっており、「内蔵が拡げられ、忌まわしい管が鼻から胃へと差し込まれ、彼はそれを逃れようとする(「このもっ…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 86

言葉を欠いた自然に叙述をつけ加えることによって、じきに、超自然の物語、占星術の、天文学の、錬金術の、化学の、地質学の、生物学の、地理学の、歴史の、神話の、儀式の、イデオロギーの、日常業務等々の物語が生じ、ゴシップとニュースとが始まった(あ…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 85

こうしたことすべてに絡み合っているのは、『歴史への姿勢』で「想像的なものの官僚化」と呼ばれた物語である。この用語は多様な混乱した発展に適用され、そこにはごく特殊で個人的な姿勢も含まれる。しかし、常に繰り返される物語は、テクノロジーの道具的…

ケネス・バーク『歴史への姿勢』 84

. 後記 『歴史への姿勢』:懐古的眺望 『反対陳述』のヘルメス版で加えた「批評教程」のなかで、『恒久性と変化』の姉妹編であるこの『歴史への姿勢』は、正確に言うと続編ではなく、ある点で、その早い時期における修正だと注釈した。『恒久性と変化』はも…