2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

一言一話 91

舞へ舞へ蝸牛 作者:大庭 みな子 ベネッセコーポレーション Amazon 教養と無気味なもの 私が無意識に使う言葉の奧には、たとえそれが創作と銘打ったものであるにしろ、日本古代の歌謡や、源氏物語の息づかいや、近松の台詞や、更に実際にかいま見たことのある…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 65

... 6.イエーツ:「ビザンチウム」と後期の詩 「向かい合わせの鏡に映る、すべてがみせかけだ」とイエーツ後期の厳しい時期の詩にある。初期の作品で「純粋な心」から生じた「我が物顔のイメージ」を問い直して、くずに過ぎないと答える。 ごみの山、通り…

ブラッドリー『仮象と実在』 186

[可能性、偶然、外的必然性、相関的と絶対的。] 蓋然性と偶然の一般的な性質をさらに考えてみると、いくつかの問題に光を投げかけることができる。(1)この問題については以前に、完全な蓋然性は実在と同じであるかを考察したときに触れた(383ページ…

一言一話 90

ロートレアモンとサド (1970年) 作者:モーリス・ブランショ Amazon サド 強者の危機 もしたった一度でも強者が自分だけの快楽を求めたがために不幸を見出し、またもしも自分の専制の行使においてわずか一度でも犠牲者となるならば、彼はおしまいであり、快楽…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 64

... 5.ホプキンスにおける高揚感と懈怠 ジェラルド・マンリー・ホプキンスの詩を考えると、次のような段階が見て取れる。 1.早熟で官能的な感覚的イメージがある。例えば、カレッジで賞を取った詩には、光、花、宝石、色彩がちりばめられ、ほとんど感覚…

ブラッドリー『仮象と実在』 185

[潜在的な存在とはなにか。 どちらも「潜在的な存在」に属するだろうが、この語句の意味を考えることに進もう。「潜在的」「隠れた」「発生期の」という語は、「実質上の」「傾向」などと加えて、あまりに多く使われている。ある種のものが存在するという意…

一言一話 89

ロートレアモンとサド (1970年) 作者:モーリス・ブランショ Amazon サド 表現 サドの第一の異常性とはこういうことである。というのは彼のもろもろの理論的思考がおのれが結びつけられている非合理的な力を瞬間ごとに解放しているからであって、またこれらの…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 63

... 4.「山登りの意味の拡がり」 アクイナスは、信仰の対象は二つの方向において考えることができると言っている(dupliciter)。(1)信じられるものの側面から(ex parte ipsius rei crecditae)。ここでは、信仰の対象は単純である(aliquid incomplex…

ブラッドリー『仮象と実在』 184

[見えざる自然と心的な傾向。] このことから、いくつかの問題の考察に進むことができる。すでに見たように(第二十二章)、物理的世界の諸部分は存在し、我々にとっては思考という形でのみ存在した。しかし、また、絶対においては、あらゆる有限な自己の内…

一言一話 88

創造的進化 (岩波文庫 青 645-1) 作者:アンリ・ベルクソン 岩波書店 Amazon 身体と形態 生命進化の一時期を私たちは安定した眺めに集中して、それを形態とよぶ。そうして、変化がいちじるしくすすんで知覚のおめでたい惰性をやぶるほどになると、私たちは身…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 62

... 3.神の修辞的な名前 しかし、ある条件に従えば、人間は社会的身分による曖昧な美化の背後で、或いはそれを越えて、究極的な存在の土壌と真に神秘的な交感をすることができると信じている人間についてはどうなのだろうか。自然の対象が天上の位階のしる…

ブラッドリー『仮象と実在』 183

[完全な条件とは実在と同一ではない。] ここで、この一般的な原理から、多様な関心に、まず最初にこの章で与えられたいくつかの難点について考えてみよう。知覚されない自然、魂の配列、「潜在的な」存在の一般的な意味の問題が我々の注意を引いた。私はあ…

一言一話 87

創造的進化 (岩波文庫 青 645-1) 作者:アンリ・ベルクソン 岩波書店 Amazon 生物の意識 生物の意識とは潜勢的な活動と現実の活動との算術的な差であると定義してよいであろう。意識は表象と行動とのあいだのへだたりの尺度である。 人間と特定していないのが…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 61

... 2.ジェイムズにおけるイメージの「社会的評価」 『ポイントン邸の蒐集品』のジェイムズの序文には、「社会神秘的解釈」による批評一般の方法の根拠となる発言がある。だが、我々はいまだ個物の位階的価値をあらわにする正確な手順を手にしているわけで…

ブラッドリー『仮象と実在』 182

[より真であるもの、より実在であるものはより多くあらわれるはずである。しかし、どんな意味においてか。] あらゆる実在は出来事の世界であらわになるはずである。そしてそうした秩序、あるいは諸秩序のなかで、自らと異質な部分が最も少ないものがもっと…

一言一話 86

時間と自由 (白水Uブックス) 作者:アンリ・ベルクソン 白水社 Amazon 持続と外的対象 われわれは本能的に印象を凝固させてそれを言語によって表現しようとする傾向がある。ここから、われわれはたえず生成の状態にある感情そのものを変化のないその外的対象…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 60

.. 「神性」の修辞的光輝 ... I.ヘンリー・ジェイムズの「もの」の神性 『ポイントン邸の蒐集品』の序文で、ヘンリー・ジェイムズは、あるクリスマス・イブ、「薄暗いロンドンの夜に心地よげな美しい光を放つテーブル」についているとき、ある言葉を聞き、す…

ブラッドリー『仮象と実在』 181

[感覚の世界、その正当な場所。単なる感覚も単なる思考も実在ではないこと。] それは、感覚―現前性にまさしく位置づけられるような基準でしかない。我々が二つの甚だしい対立する間違いとして避けられるような検証を受け入れるものでしかない。感覚-現前…

一言一話 85

時間と自由 (白水Uブックス) 作者:アンリ・ベルクソン 白水社 Amazon 運動は綜合である 運動体の通る継起的な位置は実際、たしかに空間を占めるが、それが一つの位置から別の位置へと移動するその作用、持続を占めていて意識をもった目撃者にとってだけ現実…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 59

しかしながら、「純粋な説得」についての議論は、神学の修辞にまで我々を導いたのであるが、「純粋な説得」そのものは「宗教的」説得と同じではないことを再び強調しておかねばならない。純粋な説得は具体性を取り去った亡霊のようなものである。しかし、宗…

ブラッドリー『仮象と実在』 180

[そして、我々の基準はあらゆるところで適用可能であること。] 我々の基準は、自律的な形での実在である。それは多数性と諸関係を与えられると、個別的な体系を意味する。外側からの制限は内的な内容を異質なものに依存させることになってしまうので、完璧…

一言一話 84

時間と自由 (白水Uブックス) 作者:アンリ・ベルクソン 白水社 Amazon 優美感 優美な運動がリズムに乗り、音楽がそれにともなうとき、第三の要素が介入してくる。それは、リズムと拍子とのおかげで、さらにいっそうよく芸人の動きが予見できるようになり、こ…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 58

制度的なもののみによる説明が我々を誤らせるように、精神分析的なもののみによる説明も同じように我々を誤らせる。第一に、言語の本性にある弁証法的動機は、精神分析では、心理学的動機の単なる派生物として扱われる。純粋に「形式的な」状況、言語が超越…

ブラッドリー『仮象と実在』 179

[他の基準は可能ではないこと。] それらの生の各分野については、後に立ち戻ることだろう。しかしいま、注意を引いておくべきいくつかの点がある。第一に、私は世界の異なった諸側面を完全に提示するつもりはないことを繰り返しておかねばならない。また、…

一言一話 83

新編正名と狂言―古代中国知識人の言語世界 作者:大室 幹雄 せりか書房 Amazon 荘子の言語観 仮りに荀子の言語観を、世界ー観念ーことば、と図式化するならば、これとの対照において荘子のそれは、世界ーイメージーことバー観念、とでも表示できるであろう。…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 57

我々は神学者的な意味における「神」を発見しているわけではない。神学者にとっての神は、弁証法的に到達される「観念」以上のものであるに違いない。正統的な教義の観点から判断すると、純粋な「弁証法的神」は単なる「自然神」と同様不満足なものだろう。…

ブラッドリー『仮象と実在』 178

[さらに高次の現象との関わり。] この考察は宇宙のより高次な現象を考えるときにも見いだされるだろう。単なる現象的な出来事とそれらを支配する法則だけで成り立っているのは貧しい世界であろう。日常生活において我々はすぐにこの不自然な原理と事実との…

一言一話 82

新編正名と狂言―古代中国知識人の言語世界 作者:大室 幹雄 せりか書房 Amazon 道教 選ばれた瞬間が回想、追憶であること 道家、たとえば荘子にあって事情はまったく異なる。経験的日常的次元において世界はその無定形・不安定・了解不能性・不気味さ等々にお…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 56

.. 純粋な説得 明らかに、修辞学の問題で行ける所まで行くと、「純粋な説得」の問題に突き当たる。しかし、それは形而上学の、よくとも「メタ修辞学」の境界に足を踏み入れることなので、できる限り個別例を心にとどめておくべきである。 それでは、『不思議…

ブラッドリー『仮象と実在』 177

[現象との関わりにおいて、基準をさらに特殊化する。] 上述したように、我々の単一の基準は様々な側面をもっており、簡単にその詳細を例証してみよう。(a)第一に、時間における現象を取り、その実在の量を評価しようとするなら、一方においてその調和を…