2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

よろずの紙反故 31

開運のお守りにする蟻地獄 改易に白装束でさらし巻き 凱歌あげ揺れるガラスの覆いかな 遠眼鏡開港となる三浦湾 改革で生き仏となる高僧よ

一言一話 135

アービング・バビット。 ロマン主義のノスタルジア ロマン主義のノスタルジアは、「ホームシック」ではなく、正確に言うと、家郷を離れようとする欲望である。ホメロスのオデュッセウスは本当のノスタルジアに苦しんでいた。他方、テニスンのユリシーズが家…

ケネス・バーク=マルカウ・カウリー書簡 3

989 東通り ウィーホーケン N.J 1915年11月24日 [PS] 親愛なるマルコム 今日君のひどい手紙を受け取った。もちろんそれは僕にとって古くからのいつに変わらぬ対比———僕に君のことを俗物と呼ばせ、君に僕のことを気取り屋と呼ばせる争いだ。感動…

ブラッドリー『仮象と実在』 231

[可能性と疑いについての予備的な言明。それらは実証的な知識に基づかねばならない。] あらわれの、そしてその特殊な領域の多様性の事実は、説明することができないことを見いだした。なぜあらわれが存在し、なぜ多様なあらわれがあるのかという問題は答え…

よろずの紙反故 30

素粒子の解を求めてデパートに スコップで海を埋めたる工作者 心身のかゆさに耐えて調律し 巻き尺の巻きのあまりが害となり 我意通し余った糸が針となり

一言一話 134

Rousseau & Romannticism 現実と幻影 生というのは、ここでは一なるものを与え、他では変化を与えるというものではない。<常に変化する一なるもの>を与えるのである。一なるものと変化とは分けることができない。堅固で永続性のあるものが真実だと感じられ…

ケネス・バーク=マルカウ・カウリー書簡 2

989 東通り ウィーホーケン N.J 1915年11月6日 [PS] 親愛なるマルコム 昨晩は僕の生涯でもっとも充実した時間だった。僕はドライサーのところにいた。経験したことすべてを書こうとはしない。冒涜のように思えるから。わかるだろう、僕にとって…

ブラッドリー『仮象と実在』 230

第二十七章 究極的な疑問 [我々の結論は可能なのか。] 未熟ではあるが、この作品を終わるときが来た。どれほど、またどういう意味合いで我々は主要な結論を確かなものとして扱う自由をもつだろうかと問うことで結論としよう。我々は実在が一であること、そ…

よろずの紙反故 29

秋の日の薄のなかで弱まる蚊 はんちくが鹿と蝶とを取り違え 櫂の音が骨絶つ根となる島世界 八階を降りたる君の赤い靴 十戒を金時で図する白椿

一言一話 133

食いしん坊〈2〉 (朝日文庫) 作者:小島 政二郎 朝日新聞社 Amazon 古い文化出版局の本で私は読んでいるので、下の文章がこの本にでているかどうかはわかりません。ちなみに文化出版局本で言うと、「続1」にあたります。 万太郎の勘 しかし、久保田さんの勘…

ケネス・バーク=マルカム・カウリー書簡 1

【ご足労なことに、ケネス・バークとマルカム・カウリーの書簡を訳したものも少しだけあった。マルカウ・カウリーはヘミングウェイやフィッツジェラルドたちを「失われた世代」と命名した文芸評論家である。】 序 ケネス・バークとマルコム・カウリーは19…

ブラッドリー『仮象と実在』 229

[死の後の生] この章をこれまでと近しいある問題について少々述べることで終わることにしよう。通常、魂の不死性といわれているもののことである。いくつかの理由からこの話題について私は沈黙を守っていたが、ここでの沈黙は誤解を招くことになるかもしれ…

コンクリートを引きずられて向こう側へ――S・クレイグ・ザラー『ブルータル・ジャスティス』(2018年)

ブルータル・ジャスティス デラックス版(Blu-ray+DVDセット) メル・ギブソン Amazon メル・ギブソン(渋い)とヴィンス・ヴォーン(かっこいい)の刑事二人組(バディ)が銀行強盗と戦うのがこの映画であり、確かにそれは間違いではないが、間違いではないこ…

よろずの紙反故 28

揚げ屋では杉村春子が居眠りし 夜の闇なまぐさ坊主があおだ瓜 毘沙門がお守りにする阿古屋貝 朝まだき未知の桜が道となり 車上にてラベンダーの香を嗅ぎにけり

一言一話 132

食いしん坊〈1〉 (朝日文庫) 作者:小島 政二郎 朝日新聞社 Amazon 東京の鰻屋 ウナギの好きな人は相当多い。ウナギが好きだという人に逢うと、私は口癖のように、 「どこのウナギがお好きですか」 そう言って聞く。すると、十人が十人、竹葉だとか、飯倉の野…

ケネス・バーク「特殊詩学、一般言語」 6

VI この稿を終えるにあたって、一つのあり得べき誤解について注意しておくべきだろう。言語の四つの領域について述べたとき(論理的あるいは文法的、修辞的、詩的、倫理的)、私は無意識のうちに、詩的動機の領域が主要な動機づけの力からは外れているよう…

ブラッドリー『仮象と実在』 228

[進展、絶対にそうしたものがあるか] この最後の発言の真理については議論があるかもしれない。最終的に、また全体として宇宙になんらかの進展は存在するのだろうか。絶対はあるときより別のときのほうがより良かったり悪かったりするのだろうか。進展も衰…

一作目二作――山口淳太『ドロステのはてで僕ら』(2020) ステファン・ドゥームスティエ『ブレスレット 鏡の中の私』(2020)

ドロステのはてで僕ら 土佐和成 Amazon ブレスレット 鏡の中の私(字幕版) ロシュディ・ぜム Amazon 十年近く小劇場に通っていたので、舞台を映画にした作品はすぐにわかる。はたして、ヨーロッパ企画という劇団による映画化だった。もっとも私が足繁く通っ…

よろずの紙反故 27

虫の音がフラスコ満たす曙や 揚巻の身を包みたるホイルかな 明け六つに死に装束の銀の医師 揚げ餅を酒のつまみの渡世人 揚げものは賽の目にしてジグソーに

一言一話 131

食いしん坊〈1〉 (朝日文庫) 作者:小島 政二郎 朝日新聞社 Amazon 修善寺の旅館新井と虚子、斎藤茂吉、小津安二郎『お茶漬けの味』 新井は虚子の定宿でもあった。長編小説「お丁と」が「国民新聞」に連載される時、虚子は私たちのように毎日一回ずつ書かずに、全…

ケネス・バーク「特殊詩学、一般言語」 5

V 詩人と批評家の関係という問題については(詩と詩学との関係に潜む問題でもある)、もともと私はまったく異なった分野からの引用でこのエッセイを始めようと考えていた、音楽についてのボエティウスの言である。(E・K・ランドの『中世の創設者』からも…

ブラッドリー『仮象と実在』 227

[自然の哲学とはなにか] そうした自然の哲学は、少なくともそれ自体真であるなら、物理科学の領域に入り込むことはできない。というのも、端的に言って、それは全体的に、あらゆる形式において、起源について思弁をすることを慎むだろうからである。どのよ…

よろずの紙反故 26

世界地図ピンで留めたる揚羽蝶 明け番が尻を拭きたる製図室 あけび割れあけび色したあけびの実 カリウムの揚げびさしには虎の斑が 上げ蓋に満艦飾の混濁を

一言一話 130

食いしん坊〈1〉 (朝日文庫) 作者:小島 政二郎 朝日新聞社 Amazon 泉鏡花が推奨する講釈師吉瓶 神田伯龍という講釈師と私が親交のあるのを泉さんは誰かから聞いて知っていて、伯龍のことを話題にしてくれたことがあった。泉さんは伯龍の「薮原検校」を一席聞か…

ケネス・バーク「特殊詩学、一般言語」 4

IV 「諸原則」という考えには顕著な逆説がある。ある種の詩に具現化されている諸原則は、批評家によっても、批評家の役割を演じている詩人によっても決して適切に定式化されたことはなかった(数多くの原始的な言語が、そこに内在する文法規則を明示される…

ブラッドリー『仮象と実在』 226

[自然における目的――形而上学の問題ではない] このより高次の解釈と自然の結果的な超越は上述したようなもうひとつの論点へと我々を導く。有限な魂において除外され、意志において除外されると、目的は自然において働き、観念性であり、別の意味で言うと、…

フリー・インプロヴィゼーションについて私が知っている二、三の事柄 2

ニュー・トリスターノ アーティスト:レニー・トリスターノ(p) ワーナーミュージックジャパン Amazon The Complete Albums Collection アーティスト:Russell, George Enlightenment Amazon ジャズ・イズ 作者:ナット ヘントフ 白水社 Amazon フリー・ジャズを…

よろずの紙反故 25

京マチ子柳眉を逆立てあげつらい 白金の深い鍋には揚げ豆腐 北欧の明けの明星去年の雪 サラダには揚場人足かき集め 知覚の扉開け放すのは丑三つか

一言一話 129

食いしん坊〈1〉 (朝日文庫) 作者:小島 政二郎 朝日新聞社 Amazon 典山の芸 この人の芸には何か威厳があって、私など、どうしてもあぐらをかいては聞けなかった。こんなうまい人は到底二度と現れないだろう。人には癖があるもので、この人が高座へ上がる、或…

ケネス・バーク「特殊詩学、一般言語」 3

III 我々はポオのテキストをまず詩学の観点から論じた。特殊な詩学と一般的な言語の区別について論じた。次の一歩を踏みだす用意ができた。我々が自ら詩学に限定しようとしても、別の問題が生じることに注意しよう。ここで用いられている「詩学」という用…