2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

一話一言 31

有罪者: 無神学大全 (河出文庫) 作者:ジョルジュ・バタイユ 河出書房新社 Amazon 未完了の宇宙 サン・ラサール駅に列車が入ってくる。私は列車の中にすわって、窓ガラスに顔を向けている。こんなことは、無辺際の宇宙の中の、取るにたらぬことでしかないと考…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 5

.. アーノルドの形象の質 我々がここで言おうとしていることはなんだろうか。「エトナ山のエンペドクレス」と『サムソン』に一段階を差しはさむことで両者がどのように見えてくるかを探ろうとした。サムソンは敵を滅ぼす好戦的行為のなかで自ら死したが、我…

ブラッドリー『仮象と実在』 126

...[個別性と完全性は単に否定的なのだろうか] 続く章においても、私は同様の議論を辿っていくだろう。我々の宇宙の体系のなかでその場所から外れていくようななにかが存在するかどうかを調べていくことになる。そして、突出し、戦いを起こし、不調和を導…

一話一言 30

有罪者: 無神学大全 (河出文庫) 作者:ジョルジュ・バタイユ 河出書房新社 Amazon 着衣を剥がされること 着衣につつまれたひとりの女のからだに————人間の次元では————具体化される完了態の幻影、部分的にさえ、着衣を剥がれれば、たちまち女の動物性はあらわ…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 4

.. マシュー・アーノルドにおける自己犠牲 例として、マシュー・アーノルドの『エトナ山のエンペドクレス』における自己犠牲の形象と比較してみよう。自分を「豊かな少年たちのなかの孤児」だと考え、「我々は、昼も夜も/自分を重荷に感じている」という不…

ブラッドリー『仮象と実在』 125

.. 第二十章 要約 ...[ここまでの結論。] ここで我々が辿ってきた道のりを振り返ってみてもいいかもしれない。第一部において我々は実在を捉えようとする幾つかの方法を検証し、それらが致命的な矛盾を含んでいることを見いだした。それに基づき、それらが…

一話一言 29

有罪者: 無神学大全 (河出文庫) 作者:ジョルジュ・バタイユ 河出書房新社 Amazon 爆笑 爆笑や接吻は概念を生みだしたりはしない。客体を取り扱いやすいものにするのに必要な観念よりも、爆笑や接吻の方が、「在るもの」へのいっそう真実な到達法を計らってく…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 3

.. 自殺のモチーフを適正化する もう一つの帰結をここで記そう。サムソンの行為の<自らに返ってくる>性質がくり返り強調されることで(敵を打ち負かす際の自己破壊的な要素)、間接的に自殺を認めるための仕掛けとなり得ている。だが、ミルトンの宗教は自…

ブラッドリー『仮象と実在』 124

... [「単なる私のもの」とはなにか。] それは「単なる私のもの」についても同じである。我々は道徳、論理、美学の議論において、ある種の細部は「主観的」であり、それ故無関係だという議論を聞くことがある。別の言葉で言えば、こうした細部は「単なる私…

一話一言 28

内的体験 (平凡社ライブラリー) 作者:ジョルジュ バタイユ 平凡社 Amazon 生きのびるための内在性の絆 私を超越する(私においてそれが空虚だという意味でだ)この諸客体の世界は、私をその超越性の圏内に閉じこめ、ある意味では私自身の外在性の中に閉じこ…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 2

修辞の有効範囲 .. ミルトンによるサムソンの「利用」 自由意志論者にして国王への反逆者、盲目で不幸の淵にいる老いた詩人が陰鬱で好戦的な詩句でサムソンを褒め称える。表面的には、彼の詩はペリシテ人のなかにいるサムソンを語っている。繋がれた囚われ人…

ブラッドリー『仮象と実在』 123

... [いいや、<我々>の失敗によってそう思われるに過ぎない。] 「これ」は我々の失敗によってのみ内容をもつように見える。それを偶然との関わりで述べることもできるかもしれない。というのも、偶然は与えられたなにものかではあるが、いまだ我々には理…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 1

【30年以上前、1日のペースづくりとして、2~3ページの翻訳に勤めていた。ときにはそちらに興が移り、それだけで満足し、十分一日の仕事をした気になって、酒を飲み始めるすべてが狂っているような日もあったが、この習慣は15年以上は続いた。以前に…

一話一言 27

内的体験 (平凡社ライブラリー) 作者:ジョルジュ バタイユ 平凡社 Amazon 永劫回帰 ニーチェの幻想の対象、すなわちニーチェを笑わせまた戦慄させたものは、回帰ではなくて(時間でさえなくて)、回帰が赤裸の状態にするもの、諸事象の不可能な底部であった…

ブラッドレー『仮象と実在』 122

... [なんらかの内容はこれに付着しているか。] 我々は、ある意味、「これ」が内容ではないこと、及び内容をもっていないことを見いだした。しかし、また別の意味においては、それが他になにも含まず、それ以外の何ものでもないことを見た。ここで第二の偏…

一話一言 26

内的体験 (平凡社ライブラリー) 作者:ジョルジュ バタイユ 平凡社 Amazon 笑い 私たち人間の配当物たるこの生のすみずみまで、安定性の欠如の意識が、すべての真の安定性の深い欠如の意識が、笑いの魅力を解き放つ。あたかも、突然この生が、空虚にして悲し…

ブラッドリー『仮象と実在』 121

... [これに内容以上のものが存在するか。] 我々は「これ」が排他的で、相関的であり、その関係において独立を失うことを見いだした。また、現実においては、「これ」が全く排他的でないことを見た。「これ」は常に不整合であるが、排除し、既に内的に崩壊…

一話一言 25

内的体験 (平凡社ライブラリー) 作者:ジョルジュ バタイユ 平凡社 Amazon ヘーゲルの体系が失敗するところ ヘーゲル的人間————「存在」にして「神」————は、企てとの等価値として完成され、完了する。自己は全一者にならねばならず、挫折することがない。喜…

ブラッドリー『仮象と実在』 120

... [唯一無比で自己意志としてのこれ。] そしてもし「これ」が「唯一無比」である故にその他すべてを排すると主張されるなら、この点の議論はこれ以上我々をひきとめはしないだろう。「これ-私のもの」以外の何ものも実在ではなく、この場合の問題は第二…

一話一言 24

内的体験 (平凡社ライブラリー) 作者:ジョルジュ バタイユ 平凡社 Amazon 啓示としての笑い 〔ここで二十年ほど昔に話が飛ぶ。長いキリスト教信仰から脱出して、私はまずのっけから大笑いをし、私の生は陽春の不実さとともに笑いの中に溶けていった。この笑…

ブラッドリー『仮象と実在』 119

... [これの否定的な面。自らを超越する。] 「これ」と「私のもの」が否定的なものと取れることも明らかである。あるやり方で絶対に対立しており、ある意味相反する性格をもっていると考えられる。ある部分、排他的な性格をもっていることは否定できない。…

一話一言 23

内的体験 (平凡社ライブラリー) 作者:ジョルジュ バタイユ 平凡社 Amazon 裸形の笑い 私の経てきた道程を一瞥してみよう。————あれから十五年になる(いや、もう少し古い話かもしれない)。私は夜おそく、どこかから帰るところだった。レンヌ通りには人影は…

ブラッドリー『仮象と実在』 118

... [実在についての感じとしてのこれ、事実上断片性を示すこれ。] こうした疑問は、僅かな議論しか要しないかに思われる。絶対は全体的なものであり、直接的な実在の感覚は確かにその性質をなすと仮定せざるを得ないからである。また、「これ」の個別の意…

一話一言 22

「絶対」の探求 (岩波文庫) 作者:バルザック 岩波書店 Amazon 心情の記憶しか、彼女はもっていないのだった。 日常的な細やかな記憶を忘れることはないが、知識に関することはすぐに忘れてしまうこと。夫は化学に夢中になり、財産をすり減らす。女性的なもの…

ブラッドリー『仮象と実在』 117

... [実在の直接的経験としての感じ。] 「これ」と「私のもの」は直接的な感じをあらわし、有限な存在におけるこうした性格のあらわれである。感じは、関係が発達する以前の心的段階をあらわし、或は一般的に、間接的ではない経験を指すのに用いられる(第…

一話一言 21

澁澤龍彦翻訳全集〈13〉 エロティシズム,長靴をはいた猫 作者:澁澤 龍彦 河出書房新社 Amazon 聖なるものと存在の連続性 犠牲においては、単に裸にするということだけでなく、犠牲者を殺すということ(あるいは犠牲の対象が生きものでなければ、何らかの方法…

ブラッドリー『仮象と実在』 116

... [その肯定的な面と否定的な面。] この問題の難点は大部分が曖昧さから来ている。「これ」と「私のもの」は双方とも肯定的な面と否定的な面がある。どちらも単一の実在であり、ある意味、排他的な性格を有している。この性格から性急な結論が下される。…

一話一言 20

澁澤龍彦翻訳全集〈13〉 エロティシズム,長靴をはいた猫 作者:澁澤 龍彦 河出書房新社 Amazon 裸体 決定的な行動は裸にすることである。裸体は、閉ざされた状態、つまり非連続な生存の状態に反しているのだ。それはいわばの状態、自閉の状態の彼方に存在の可…

ブラッドリー『仮象と実在』 115

.. 第十九章 これと私のもの ... [その一般的な性質] 我々は空間と時間の形式が絶対の個別性に対する有効な反論たり得ないことを見てきた。しかし、我々はより重大なものとなるであろう難点にまだ直面していない。この章の表題に示された事実である。感じ…

一話一言 19

澁澤龍彦翻訳全集〈13〉 エロティシズム,長靴をはいた猫 作者:澁澤 龍彦 河出書房新社 Amazon 連続性へのノスタルジー 基礎的には、連続から非連続へ、あるいは非連続から連続への過程がある。私たちは非連続の存在であり、理解できない運命の中で孤独に死ん…