2022-05-29から1日間の記事一覧

佐藤春夫「円光」

1914年の短編。ある画家が若く美しい妻をめとり、一家を構えることになった。ある日、見知らぬ人物から手紙を受け取る、どうやら妻が以前付き合っていた男であるらしい。妻に聞いてみると、ええ、知ってる人だわ、愛し愛された人です、だって「あたしは…

幸田露伴芭蕉七部集『冬の日』評釈の評釈47

縁さまたげのうらみ残りし 芭蕉 従姉妹のために縁を妨げられたことがあり、恨みが残っているという解は受けいれがたい。本来は従姉妹と縁があったものを、親の家が衰え傾いて親類のあいだで疎まれるようになったとか、あるいは他の家より強引に娘をその男に…

トマス・ド・クインシー『自叙伝』17

悲しみ、汝は憂鬱を呼び起こす情念である。塵よりもつまらないものだが、雲よりも高い。マラリアのように震えるが、氷のようにしっかりしている。心を病にするが、その虚弱を癒しもする。私のなかで最も弱いのは、恥に対する病的なまでの感受性だった。十年…

ブラッドリー『論理学』83

§21.この原理は実際に行なわれる選言に先行している。それはその関係がどんなものかはわからないが、関係の共通地盤があることをあらかじめ言っている。選言は、関係が相反する領域にあるという更に限定された場で生まれる。かくして、我々は一方において…