2022-05-30から1日間の記事一覧

幸田露伴「一刹那」

明治二十二年の短編。露伴は他の作家と比較して、小説形式の仕掛けを工夫していて、この小説では「一刹那」という言葉をきっかけにして状況が変わる。短編だが、さらに三つの話から構成されている。第一は、放蕩の末財産をなくしていまはらお屋をしている男…

幸田露伴芭蕉七部集『冬の日』評釈の評釈48

口をしと瘤をちぎる力無き 野水 「瘤」ははふすべと読んでも、しいねと読んでもいいが、ふすべと読まれてきた。こぶである。『倭名抄』に従おうとする者はしいねと読むべきだろう。前句の縁さまたげの恨みを縁談不成立と見なして、ここでは花婿になろうとし…

トマス・ド・クインシー『自叙伝』18

この時、飽くことを知らない悲しみの衝動のもとで、得ることのできないものを捕まえること、僅かの材料からイメージを形づくり、それを熱望の順に分類する能力が私のなかで病的なほどに発達した。現在でも私はその一例を思い出すが、それは単なる陰や光のき…

ブラッドリー『論理学』84

§23.既に見たように、排中律は選言判断の特殊例である。このことは、いくつかの錯覚を吹き払う助けとなるだろう。 第一に、排中律は、それを使うことで、未知の深みから知識を魔術のように呼びだす、そうした呪文ではない。いかなる主語も二つの述語のう…