ケネス・バーク

ケネス・バーク『動機の修辞学』 31

.. 唯名論的隠匿(クロムウェルの動機に関して) マルクス主義のイデオロギー分析は、文学的美学的な過去の遺物のなかで、ただ「諸観念」だけが生き残るという事実によってある意味誤った方向に導かれ得るのではないだろうか。名誉、忠誠、自由、平等、同胞…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 30

.. マルクスの「神秘化」 中世初期の修辞学理論を論じた箇所で(『スペキュラム』1942年1月)、リチャード・マッケオンは書いている。「カッシオドルスによれば、『修辞の技芸とは、世俗的な言葉の精通者が教えるものであり、市民社会の問題をうまく語る学で…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 29

.. .. ベンサムの修辞的分析 説得の研究についてのベンサムの偉大な貢献は、そのほとんどが彼自身の意図に反してなされた。形象の暗示を真に越えることのできる議論の方法を奨励しようとして、彼はいかに我々の思考が形象に支配されているかをあらわにした。…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 28

.. イメージと観念 イメージを強調することは、観念に反対することを含んでいる。エドモンド・バークは、間違いなく、観念とイメージを相互に補完するものとして扱いたがり、彼の処方によれば、重要な言明はすべて考えとイメージと感情を持っているべきであ…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 27

.. 想像力 恐らく、一種の<知>としての想像力の理論は、詩的思考と科学的思考とが重なり合う領域において最上の働きをするので、説得手段としての「想像力」への関心は近代になるまで十分な開花を見るに至らなかった。また、古典的修辞学におけるそうした…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 26

.. 大きな修辞形式 より大きな説得の形式もあって、聴衆の善意を守ろうという前置きから始まり、次に自分の立場を述べ、そして議論になっているところを指摘し、十分に自分の見解を述べ、反対者の主張を退け、最後の締めくくりには、反対者の論点は無視して…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 25

. 形式的訴えかけ いかに同一化の原則を含んでいるかを示そうと、形式的な訴えかけについて先に言及した.ときには、その普遍的性格から、修辞学から詩学への移行が容易になされた。かくして、効用というより、文学的評価の観点から偏向的な弁舌をも考察し、…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 24

.. 修辞的動機の他の形態 修辞の普遍性を主張している箇所において(『弁論家について』の第一巻)、キケロは正しい行動と正しい言葉が一つと考えられていた幾分神話的な段階から始めている(アキレスの訓練を書いたホメロスが引用される)。次に彼が遺憾を…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 23

.. 同一化 ソクラテスを引用して、『弁論術』のなかでアリストテレスは、「アテナイ人のなかでアテナイ人を褒め称えるのは困難なことではない」と言っている。彼は、聴衆が一般的に美徳だと考えているものの目録をつくる。公正である、勇気がある、自制心が…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 22

修辞の伝統的原理 .. 説得 「説得を目的とした発言」(dicere ad persuadendum accommodate)。これがキケロの対話篇『弁論家について』で修辞(またその同義語である「雄弁」)に与えられた基本的定義である。キケロの代弁者であるクラッススは、当然のよう…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 21

.. 修辞の現実主義的働き 進むにつれて勇気を得た我々は、修辞学に人類学を導入するよう提案するよりは、人類学者が自らの領域に修辞学の要素があることを認めたのだとさえ主張できるようになった。つまり、こうした議論から最近の原始魔術についての研究を…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 20

. 修辞と原始魔法 カーディナーの引用は「ナヴァホ族の魔法」についてのC・クルックホーンの論文からとられていて、魔法を修辞学の範囲にもたらすような観察が含まれている。実際、魔法がその背後にもつ個人的な富、権力、復讐へと向かう動機は、<部族的な…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 19

.. 修辞の「行き先」(個人の魂) 我々の整理によると、唯一無二の個人は象徴の範囲に収まる。しかし、だからといって、いわゆる「個人心理学」にもそれが当てはまると考えるべきではない。特に、フロイトの神経症患者に対する関心には、修辞的な要素が強く…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 18

.. 率直な同一化と狡猾な同一化 自己欺瞞という考えは、また別の可能性の領野をもたらす。同一化を通じ、修辞的動機が、行為者の意識的な方向づけなしに働きうるような広い領域が存在する。古典的な修辞学は、修辞の明らかな企図を強調した。しかし、修辞学…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 17

.. 科学の二重の可能性 しかし、ここはいくら注意してもしすぎることはない。宗教、政治、経済は、周知のように面倒な問題であり、今日の多くの人間にとって、応用科学の崇拝はそれらを一つにまとめる原動力となっている。このことを明らかにするのは痛みを…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 16

. キリスト教後の科学における「贖罪」 十字架にかけられたキリストの犠牲によって贖罪の観念を形成した文化で、社会化の諸過程が世俗化されてしまったキリスト教後の科学においてなにが生じているのだろうか。犠牲となった王を祀る司祭の必要は徐々に減じて…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 15 

.. 科学の「自律性」 科学は、単なる道具(媒体)としては、場面、行為、行為者、目的の性質を取り、同一化すると思われる。欠陥のある政治構造が人間関係を歪めるのであれば、同様に科学も歪められると予想するのは理にかなったことであろう。教会の擁護者…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 14

. 同一化と「自律」 「自律的な」活動について言えば、修辞的同一化の原則は次のように言うことができる。ある活動が活動主体に本来備わっている自律の原則に還元可能だという事実は、異なった動機づけとの同一化から自由だということを意味しない。そうした…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 13

.. 属性の同一化を目指す性質 形而上学的に言えば、ものはその<属性>によって同一視される。修辞学の領域では、こうした同一視は、しばしばその語の最も物質的な意味における属性、つまり経済的な資産、コールリッジが「宗教的瞑想」において語ったものに…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 12

.. 同一化と「三位一体」 Aは、同僚Bと同じではない。だが、彼らの関心が重なる限りにおいて、AはBと<同一化>する。あるいは、関心が重なっていないときでも、自分でそうだと思い、あるいはそう信じるよう説得されるならBに<同一化する>かもしれな…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 11

.. 同一化 我々は『闘士サムソン』が「利用」したもののなかから、神の敵を殲滅するために自らの身を滅ぼした盲目の巨人への詩人の同一化について考えた。そして、ピューリタンとイスラエル人、王党派とペリシテ人の同一視を認め、そうした同一視はある種の…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 10

.. 額面通りの形象 額面通りにとれば、形象は我々がその本分に従って反応するよう促す。かくして、「成長する」ことに必死な青年は、映画に教えられて、観念的あるいは想像上の大人の世界の最も注目に価する行動として残忍さや殺人の形象について深く考える…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 9

.. 要約 第一に、我々は神に同一化するサムソン、それに同一化するミルトンについて記した。それから、王党派のペリシテ人との、ピューリタンのイスラエル人との同一化がある。次に、そうした同一化を用いた詩を書くことで、現実のミルトンが市民として不満…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 8

.. パーソナリティ・タイプにおける「悲劇」の形 死や悲劇的終幕との関わりにおいて本質を定義することの背後に普遍的に感じられる文法の原則があるとするなら、アンケート調査がある種宗教的な崇拝の対象となっている我々の擬似科学において、「悲劇」の範…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 7

.. 本質との劇的、哲学的関係 能動的、再帰的、受動的な死(殺す、自殺する、殺される)についての形象は、死についての思想が人間の動機づけに基本的なものであるために劇的緊張を高める働きをすることは明らかで、通常はその使用方についてこれ以上考える…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 6

.. 変容のイメージ化 もう一つのやっかいの種を加えることで、事態を明確化できる要素をつけ加えることにもなる。今度は、同じ「歴史の曲線」に属するコールリッジの「宗教的瞑想」からである。 彼の巨大な一族には 無傷のものを傷つけるカインは存在せず(…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 5

.. アーノルドの形象の質 我々がここで言おうとしていることはなんだろうか。「エトナ山のエンペドクレス」と『サムソン』に一段階を差しはさむことで両者がどのように見えてくるかを探ろうとした。サムソンは敵を滅ぼす好戦的行為のなかで自ら死したが、我…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 4

.. マシュー・アーノルドにおける自己犠牲 例として、マシュー・アーノルドの『エトナ山のエンペドクレス』における自己犠牲の形象と比較してみよう。自分を「豊かな少年たちのなかの孤児」だと考え、「我々は、昼も夜も/自分を重荷に感じている」という不…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 3

.. 自殺のモチーフを適正化する もう一つの帰結をここで記そう。サムソンの行為の<自らに返ってくる>性質がくり返り強調されることで(敵を打ち負かす際の自己破壊的な要素)、間接的に自殺を認めるための仕掛けとなり得ている。だが、ミルトンの宗教は自…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 2

修辞の有効範囲 .. ミルトンによるサムソンの「利用」 自由意志論者にして国王への反逆者、盲目で不幸の淵にいる老いた詩人が陰鬱で好戦的な詩句でサムソンを褒め称える。表面的には、彼の詩はペリシテ人のなかにいるサムソンを語っている。繋がれた囚われ人…