レイモンド・ウィリアムズ

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』17

3.文学 「文学」を概念としてみることは比較的困難である。通常の用法では、特殊な記述以上のものではなく、そこに記述されているのは、概して、概念として働きながらそれでもなお現実的かつ実際的であると固く信じられている特殊な作品及びそれに類した作…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』16

フォルマリストの体系は、当今の構造主義的マルクス主義の一派のように、この点を「既に与えられたもの」、「経済構造によって最後の瞬間に決定されたもの」としてのみ触れることができる。この種の還元を避けるためには、「記号」と「信号」とのボロシノフ…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』 15

彼の努力の多くは、活動性としての、実践的意識としての言語への強調を取り戻すことで、それは閉鎖された「個人意識」や「内的精神」へ向かう特殊化によって結果的に否定されてきたものだった。この伝統は、閉じられた形式体系の二者選択ということを離れて…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』 14

言語を道具へ還元することに対抗するものとして、活動としての言語を観念論風にあらわした、言語を表現としてとらえる考え方は、明らかに魅力的なものであった。それは、敵対理論が情報の伝達、メッセージの交換、対象の名づけに限定し、最終的には抑圧した…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』 13

十九世紀後半から二十世紀中盤にかけての実証主義が優勢な時期においては、マルクス主義の支配的な部分は、こうした事実上の還元を行なった。全般的に無視されていた言語理論において直接的にではなく、意識についての考察や、「イデオロギー」や「上部構造…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』 12

本質を構成するものとしての言語の観念は、常に、こうした還元の危険にさらされている。しかしながらそれは、孤立した独創的な語が観念論に向かう方向においてのみではなく、客観的唯物論や実証主義においても、「世界」や「現実」や「社会現実」が、あらか…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』 11

この言語の物象化の主要な理論的表現は、二十世紀に、客観主義的なデュルケム的社会学と密接な関係をもつソシュールの作品においてあらわれた。ソシュールにおいて、言語の社会的性質は安定しており、自律的で、規範的で同一の形式に基づいたある体系(ラン…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』 10

比較分析と分類に基づいたこの仕事は、その手続きにおいて、同時代の進化論的生物学に非常に近かった。それは学問的な調査がいっせいに行なわれた主要な時期の一つであり、経験に基づいて、進化論的発達や諸関係の図式を含んだ言語語族の主要な分類だけでな…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』 9

この局面を把握することは、ヴィーコがそれを言語発達の諸段階、つまり、神的、英雄的、人間的という著名な三段階として図式化したと読み取れるために困難であったし、いまでもそうである。ルソーはこの三段階を「歴史的」なものとして繰り返し、諸段階を力…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』 8

だが、この基本的な仮定のもと、言語の使用について更なる探求を、個別の特殊な方法で企てることができる。現実を示す方法としての言語は論理学として研究される。現実へ接近する断片としての言語、特にものを書くときの決った形式は、その形式上の「外的な…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』 7

2.言語 言語の定義とは、常に、明示的にも暗黙のうちにも、世界における人間存在の定義である。主要なカテゴリーとして受け入れられているもの――「世界」、「現実」、「自然」、「人間」――は「言語」というカテゴリーと対置され、関係づけられるが、いまで…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』 6

しかし、この達成のなかにも難点がある。本質的なものとして社会的過程を強調することは、進歩的単線的な発達と関連する、根強く残っている合理主義の一種、社会の「科学的法則」を発見しようとする傾向の一変種だと性質づけられる。それは本質的な部分を弱…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』 5

最初の実質的な問題は「文明」に向かう姿勢である。ここにマルクス主義の決定的な介入があって、「市民社会」と「文明」という語に含まれるものは、特殊歴史的な形で、つまり、資本主義的生産様式によってつくりだされたブルジョア社会として分析されるべき…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』 4

実践においては常に二つの発達の間にある種の関係がもたれているが、その強調点は非常に異なっている。この第二の意味の始まりには、「文明」という語がもつ、ある種の完成された状態と発達の完成された状態という両義性がかかわっている。この完成された状…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』 3

「文明」と「文化」(特に初期において共通する「耕作」という形では)は結局十八世紀後半までは交換可能な言葉だった。両者は共に、完成された国家と発達の完成型である国家という問題のある二重の意味を伝えた。結果として生じた分岐にはいくつかの原因が…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』 2

広範囲にわたる歴史的発達の文脈においてみると、「文化」という概念は、限定的な他のあらゆる概念に対して強い圧力を及ぼしている。それが常にこの概念の利点である。また、定義と理解双方において常に困難の源ともなっている。十八世紀までは、それはまだ…

レイモンド・ウィリアムズ『マルクス主義と文学』 1

【これも多分三分の一くらい。】 I.基礎概念 1.文化 現代の思考と実践の主要な領域のちょうど中心にあるものとして常に記されているのは「文化」という概念であり、様々な変化と複雑化を経ることで、論点としてだけでなくその発達を通じて直面してきた諸…