田中王堂(慶応3年~昭和7年)に『書斎より街頭に』という著作があるが、

 

サン★ロレンツォの夜 [DVD]

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 田中王堂(慶応3年~昭和7年)に『書斎より街頭に』という著作があるが、寺山修司の『書を捨てよ、町に出よう』はそこから来たのだろうか、田中王堂についてはまったく知らなかったが、早稲田大学で教えていて、ジョン・デューイに教えを受け、ウィリアム・ジェイムズプラグマティズムをもとに評論を行った人だというから、あながちないはなしでもない。

 

 タヴィアーニ兄弟の『サン・ロレンツォの夜』(1982年)は、第二次大戦の末期、戦いを逃れていく村人たちの姿を描いて、彼らの真の敵は国が戦っているはずのアメリカなどではなく、ファシストたちで、この村でも陣営が二分され、骨肉の争いともなりかねないが、自分が子供だったころのことを自分の娘の夜物語にいってきかせるという枠をしつらえているためか、どこか牧歌的で、特に村人たちがスイカ畑に行き会い、小さな女の子がスイカの上にウンと座り込んで割るのがかわいかった。

 

 寺山修司の話が出たが、私自身は寺山のあまりいい読者ではなく、映画も一通り見たが関心はもてず、前にも書いたことだが、芝居は最後の公演を見損ない、と結局あわないままにすぎているが、『不思議図書館』というエッセイ集だけ強く記憶に残っているのは、高校の修学旅行で京都に行ったとき買った本なのでよくおぼえていて、確か駅ビルのなかの本屋で購入し、黄土色の紙カバーのこともはっきりしているのだが、本そのものはどこかにいってしまった。