正岡子規と瓢箪
考えてみると、物心ついてからずっと地平線の先には山並みがある。閉塞感、あるいは守られている感じを受けたことは特にない。寒い地方ではないので、真冬にでもならなければ雪をかぶることはないけれど、季節ごとに色合いを変える。自宅と山のあいだには町がないので、夜になると真っ暗になる。
星もなく月も見えない今宵には段々状に闇が重なり
正岡子規の『筆まかせ』に「瓢箪」という項目があって、瓢箪はその形状が好きで、古道具屋などで見つける度に買おうかなと思うのだが、酒はのまないし、生ぬるい水を入れて飲むのもぞっとしないなあ、と思っているうちに買わないままになっているのだが、そのことは関係なくて、正岡子規は、どれほど容量や大きさの違う瓢箪をとりだしてみたところで、大きい瓢箪のなかに小さな瓢箪が入るわけではない、これを「瓢箪相容レズ」というのだといっていて、なにが言いたいのか二、三時間考えていたら、「氷炭相容れず」に引っかけたのかとようやく理解して、なんだくだらない。
ひょうたんが氷枕の熱の夜は廻り舞台で瓢箪から駒