電気石板のみの市 1 平岡正明『シュルレアリスム落語宣言』(2008年)

 

シュルレアリスム落語宣言

シュルレアリスム落語宣言

  • 作者:平岡 正明
  • 発売日: 2008/02/05
  • メディア: 単行本
 

「まえがき」を著者の長年の友人であり、対談本も数冊だし、日蓮宗の僧侶でもある上杉清文が、装丁を南伸坊が、編集をこれまた長年の同志である白夜書房の末井明が担当している、なんと50篇の論考がまとまっていて、巻末に快楽亭ブラックとの対談まで入って、750ページを超えるのだからそれも無理はない。

 

 「31 じょうよ価値学説史、饅頭こわい」はある人物への追悼文ともなっている。桂枝雀論である『哲学的落語家!』を書いているときの話。

 

 大阪落語の「饅頭こわい」では、じょうよまんじゅうが出るのが常だという。平岡正明をはじめとして、担当編集者もじょうよがわからない。結局、薯蕷と書き、山の芋と米の粉だけでつくった薄い皮に小豆餡を包んだ最上級の饅頭の名称であるとわかる。担当者の努力もあって、ゲラの段階で朱筆を入れてくれたのだが、ここがいかにも平岡正明らしいのだが、漢字にしてもいかにも不味そうな饅頭の名前はそのまま放っておいた。そして県立図書館司書の大内順のことを思いだす。

 

 大内順がいれば、面白いですねえ、と好奇心を隠しもせず、ジョウヨを愛する宝塚少女歌劇団スター一覧表なんてことも調べあげる。もういい、饅頭こわいとこちらが手を振ると、お口直しにどうぞと羊羹出すような人なんだ。

 

 

 

 私は県立図書館は2、3度行ったことがあるだけだが、すれ違ったことがないとも言えない。