電気石板蚤の市 3 田中小実昌『オチョロ船の港』(1979年)

 

 7編の短編からなっている。泰流社というあまり聞かない出版社からでている。バスに乗るのと哲学書を読むのが好きな作家。同名の短編の冒頭のあたり。

 

 道路の表面がしろいのは、瀬戸内の花崗岩系の土質のせいだろう。しかし、月の光で見る道路は、映像のようで、それもブレのある映像みたいに、表面がしろくうきあがっていた。

 その道路を背景にして、女の太腿は、およそ映像とは逆の、また錯覚というコトバとも違い、サブスタンシャル(実質的)な白さと厚みがあった。

 女の実質的な太腿とお尻が、ちいさな断末魔とでもいうような、これまた実質的なうごきをし、太腿とふくらはぎがかさなった、ななめの曲線が、うしろにはねあがるお尻の丸みと接点をつくるところから、ひかりが条になって噴きだした。

 

 

 確かカントが好きだったと思う。あるいは、カントを読む場面が多かっただけかもしれない。かなり私にはエロティックに感じて、でもそれは単に私の趣味の問題であるのかもしれない。