電気石板蚤の市 4 種村季弘『東海道書遊五十三次』(2001年)

 

東海道書遊五十三次

東海道書遊五十三次

 

 朝日新聞社からの刊行で、東海道五十三の宿場に関連した江戸以前まで含めた日本文学を紹介していく。小田原から熱海まで人車という乗り物が走っていた。

 

十人乗りくらいの箱車を四、五人の法被姿の男が後押しをする軌道車で、下り坂は快適かつ危険だが上り坂は乗客も降りて後押ししなければならないはめになるという、おそるべき乗物だった。

 

 

 この乗り物は、牧野信一の幼年期の思い出にはしばしば登場するようで、牧野家は正家の地所で莫大な財産を儲けたが、交通手段が発展するごとに転落していった。そんなエピソードに溢れている。