断片蒐集 4 アドルノ

 

美の理論 新装版

美の理論 新装版

 

 

醜い景観

 

市民意識は産業によって掘り返された景観を醜いものときめつけるが、こうした判断は素朴なものであるとしても、一つの関係を的確に捉えたものと言ってよい。つまり、自然が人間に、人間によって支配されていない顔を向けるところにおいて出現する、自然支配を捉えていると。掘り返された風景に対する憤激はそのため、支配のイデオロギーに順応することになる。もしいつか人間の自然に対する関係が、人間の抑圧を続けている抑圧的特性を持ちつづけることを断念することがあるなら、こうした醜さも消滅するかもしれないが、その逆はありえない。技術が平和的なものとなるなら、技術によって荒廃した醜い世界が消滅する可能性も生まれてくるかもしれないが、こうした世界のうちに計画的に自然保護地帯を作り上げたところで、そうした可能性が生まれることはない。