断片蒐集 34 ロバート・アルター/ユートピアとしての断片
Necessary Angels: Tradition and Modernity in Kafka, Benjamin, and Scholem
- 作者:Alter, Robert
- 発売日: 1991/03/01
- メディア: ハードカバー
ベンヤミンの『パサージュ論』は膨大な断片の集積のように見えるが、 実は一般的な読者が考えている以上に完成に近いのかもしれない。
断片
ベンヤミンもショーレムも断片に魅了されていた。ショーレムは、本質的に断片的である、あるいは少なくとも反体系的である伝承を解釈することに生涯を捧げていた。彼の作品の力は、その批判者のなかには、存在しないはずの場所に体系を作りあげたと非難する者もあるが、混乱した文学的砕片から概念的にある体系を定義することに成功したことにある。ベンヤミンの目的は逆であった。モンタージュの機敏さによって材料の断片性を保ち、アフォリズム風の観察と絶え間のない引用を結びつけ、体系的な思考を並列そのものから生じさせようとするのである。恐らくその仕事は最終的には実行できないものだった。