断片蒐集 42 アウエルバッハ/あまりに人間的な

 

 歴史認識と自己認識の深さが直結することがエッセイの発明だった。

自己認識の企図 モンテーニュ

任意の一つである自分の生活をモンテーニュが吟味するのは、結局人間の本性を探究せんがためである。そしてこのようにした彼は、われわれが身近なものであろうと、あるいは遠くはなれた歴史的、政治的なものであろうと、ともかく他の人間の行動を理解し、批評しようとするときに、意識的・無意識的に、そしてまともなあるいは強引なやり方で、利用する作業仮設的な原理を明らかにしてくれる。すなわち、自分自身の生活や内的経験にもとづく物指を、そういう他人の行動にあててみるのである。それだから、われわれの人間ないし歴史認識は、われわれの自己認識の深さ、道徳的視野の広さにかかっているのである。