ブラッドリー『仮象と実在』 4

第一部 仮象



  第一章 一次性質と二次性質

 

      [一次性質だけを実在ととる誤りを説明しようとする試み]

 

 精神は、早くから、多くの錯覚と間違いを強いられている。我々が普遍的なものとして理解しようとする諸観念は、我々の誤りを正す試みと考えられる。第一部において私はそれらの観念のいくつかを批判し、それらが対象とするものに届かないことを示したい。かく理解されたとき、世界とは自らに矛盾するものであり、それゆえ、仮象であっても、実在ではないことを示そうと思う。

 

 この章では、一次性質と二次性質とを区別して事物を理解しようとする提案から始めよう。この考え方は古いが、言うまでもないことながら、廃れるどころか、永久に消え去ることはなかろう。疑いなく、人間が存在するかぎり、数ある第一原理のなかでももっとも進んだ、かつ科学的理論としてたびたび登場するだろう。私がここから始めるのは、それが単純で、概して容易に処理されるからである。一次性質は我々が知覚、あるいは感じるもの、一言で言えば、空間的なものであり、残りが二次性質となる。世界の謎を解決するには、前者を実在とし、それ以外をその派生物、多かれ少なかれ正当性をもつ仮象とすればよい。

 

 この考えの根底にあるものは読者にも周知であろうが、明確を期するために、その大要を辿らなければならない。我々は事物が自己矛盾のない自己完結したものに違いないと仮定している。それはある性質をもつか、もたない。もつ場合には、時に応じてもったり、このあるいはあの関係においてだけもつということはあり得ない。だが、こうした原則は二次性質にとっては不都合である。