ブラッドリー『仮象と実在』 12

      (II.関係のある性質は理解しがたい。性質は関係に分解することはできない。)

 

 2.諸性質は、関係なしには、理解できる意味をもたないことを我々は見いだした。不運なことに、両者が共にあっても同様に理解できない。第一に、諸性質は完全に関係のうちに溶け込むことはできない。実際、別個でなければ差異は残らないと主張はできるが、にもかかわらず、差異は別個であるもののうちに消え去ることはないだろう。多かれ少なかれそうならざるを得ず、それだけでは全体がつくられ得ない。思考にとって、関係的でないものはなにものでもないとまだ私は主張する。他方、なにものも関係づけられないものはなく、関係のなかにある諸性質を単なる関係にすることは不可能だとも主張する。現実は双方が与って成り立っているように思えるが、お望みなら、どちらか一つで成り立っていると述べてもいい。しかし、一方を望まないで、関係がそれを成り立たせている項をどうにかしてつくりだせると言うなら、私にはその意味がまったく理解できない。私の理解しうる限り、関係は項に依存せねばならず、同じように項は関係に依存せねばならない。弁証法的方法に明らかな部分的失敗は、この点に関する思い違いに関連しているように思われる。