ブラッドリー『仮象と実在』 24
第六章 因果関係
(変化の矛盾を避ける努力。しかし、原因と結果は両立しがたい。)
この章の目的は、第一に、因果関係の主要な矛盾を指摘し、第二に、時間の連続性から生じる障害を明らかにすることにある。他の一般的な問題については後の章で考えることになろう。(1)
(1)因果法則については二十三章で触れた。
我々は原因を、変化を合理的に考える一つの試みと見なす。AはBになり、この変化はAと両立不可能であるように思われる。Aは単にAであり、なにか異なったものになるなら、異なったなにかなのである。別の言葉で言えば、変化にはなんらかの理論的裏づけがなければならない。しかし、満足な裏づけを見いだそうとする努力は実りのないものである。
我々はAがBでないものとしてあるのでも、Bとの関連においてあるのでもないことを見る。「Bが後に続く」、「ABに変わる」というのはAと同一ではない。我々は仮象以上のものではあり得ないAにそれらを結びつける方法を見いだすことができない。因果関係において、我々は結びつけのための新たな努力に取りかかっているには違いないが、その本質は非常に単純である。もし「AがBになる」というのが自己矛盾なら、重荷を分担してAになにかをつけ加えればいい。「A+CがBになる」と言うなら、多分悩みは軽減されるだろう。しかし、この軽減は、理論的に考えると、矛盾の固まりである。
詳細にわたって調べるのは割に合わないであろう、というのも、問題の根にあるものはすぐに言うことができるからである。結果の系列が原因と異なるなら、この相違の原因をどのように論理的に擁護することができようか。他方、それが異ならないなら、因果関係は存在せず、主張はばかげたものとなる。この根本的ジレンマから抜け出す道はない。