一言一話 6

 

 

リズム・時間

 リズムが構造に働きかけることをよく示している実証的な実験が、いくつかある。・・・もしフォスゲンCOCL2に、振動数がちょうど<塩素三五>の帯スペクトルに入るような紫外線をあてたとすると、このフォスゲンから<塩素三五>だけを分離してとりだすことができる。<塩素三七>のほうは、あてた紫外線のリズムに同調せず結合状態のままとり残される。この例で分かるように、輻射は物質を解きはなつのである。リズムに支配されるこれらの反応をそのあらゆる細部にいたるまで理解することが無理だとしたら、それは時間にたいするわれわれの直観がまだ相当に貧しいことによるのである。われわれは絶対的な始まりと、連続的持続についての直観をもっている程度にすぎない。この無構造の時間は、最初に見たときには、あらゆるリズムを自分に受け入れる能力をもっているように見える。しかしそう見えるのは見かけだけで、それは時間の実在性を連続的なもの、単純なものと見込んでいるからなのである。これにたいして、ミクロ物理学というこの新しい領域では、時間の驚異的な作用のすべては明らかに非連続的なものと関係している。ここでは、時間は持続によるよりも、反復によって作用することが多い。

 

 時間がリズムによって成り立っているとすると、持続的時間と思われたものは非連続的なものになる、あるいは死の概念もわ変わるかもしれない。持続的なものが中断されるのではなく、むしろリズムが途絶え、初めて真の持続が始まるのだから。