一話一言 27

 

 

永劫回帰

 

ニーチェの幻想の対象、すなわちニーチェを笑わせまた戦慄させたものは、回帰ではなくて(時間でさえなくて)、回帰が赤裸の状態にするもの、諸事象の不可能な底部であった。そしてこの底部は、どの道を経て人々がそれに到達するにせよつねに同じものなのだ、なぜならそれは夜なのだから、そしてそれを認知すれば、失神する(発熱にいたるまで擾乱し、恍惚におのれを滅ぼし、涙を流す)ことしか残されてはいないのだから。

 「夜よりほかに聴くものはなし」と山田風太郎は言った。