一話一言 30

 

 

着衣を剥がされること

 着衣につつまれたひとりの女のからだに————人間の次元では————具体化される完了態の幻影、部分的にさえ、着衣を剥がれれば、たちまち女の動物性はあらわなものとなり、その姿を見ることは、私の中に、私自身の未完了態をあからさまにする。・・・もろもろの存在は、完全なものと見えるかぎりにおいて、相変らずの孤立状態にあり、おのれ自身に身をかがめたままである。だが、未完了の傷口がその諸存在を開いてやるのだ。未完了、動物的裸体、傷口などと名づけうるものによって、各種のばらばらな存在は互に交感しあい、一方から他方への交感のさなかで身を滅ぼしつつ、はじめて生命を得るのである。

 一回だけストリップを見たことがあるが、なかで最も印象的だったのは、金粉を塗った男女があらわれ、男が女をぶんぶん振り回す、アクロバティックなもので未完了態を感じるまでいかなかった。