ブラッドリー『仮象と実在』 170

[真理――その性質。]

 

 我々はすでに思考過程の主要な性質についてみてきた(1)。思考は本質的に「そこにあるもの」と「なんであるか」を分離することにある。この分解は事実上の原理として受け取れる。従ってそれは事実をつくりだす試みを拒否し、内容に自らを限定する。しかし、この分離を抱え込むことで、またその独立した発展を極限まで追い求めることで、思考は間接的に崩壊した全体を修復するよう努めている。それは自律的で完全な観念の配列を見いだそうとしている。そして、この述語によって実在は性質づけられ、妥当性を得なければならない。そして、すでに見たように、その試みは結局の所、自滅に終わるだろう。真理はそれがあらわしているものを意味し、意味しているものをあらわすべきである。しかしこれら二つの側面は最終的には両立不可能であることが証明される。主語と述語のあいだには取り去れない差異があり、この差異は主張されていることに従えば思考の失敗を示しているのだが、もし取り除かれてしまうと思考に特殊な本質が完全に破壊されてしまうだろう。

 

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*1:(1)第十五章、十六章。『マインド』第47号参照。