一言一話 96

 

物の分化に反比例する人間の行為の分化

 習慣になっているいくつかの行為が役に立たないこと、身体の操作に基づく日常生活のリズムの切断からは、深い心理・生理的な結果が生ずる。事実、真の革命が日常のレベェルで生じている。今日、物は物とかかわる人間の行動よりも複雑になっている。物はしだいに分化して行くが、われわれの行為はしだいに分化しなくなっている。このことは次のように言いかえることができる。物は、物が役を演ずる行為の劇にもはや囲まれてはいない。物はその目的性のために、人間は脇役を演ずるか観客になっているところの全体的なプロセスのなかでの俳優のようなものになっているのが現状である。

映画やドラマなどで、現代が舞台になっていないこと、80年代が取り上げられ、転生ものが好まれ、『現代劇』だとすると、主人公が何らかの超能力を持っていたり、物が欠如した貧困のうちにあることが象徴的である。すでに現代は描けなくなっている。