一言一話 109

 

『審判』の朗読、笑い

 

 カフカが自分で朗読するとき、このユーモアは特にはっきりと現われた。たとえば、彼が「審判」の第一章を聞かせてくれたときなど、われわれ友人たちは腹をかかえて笑った物だ。そして彼自身もあまり笑ったので、しばらくのあいだ先を読みつづけることができなかった。――第一章の恐ろしいほどの真剣さを考えてみた場合、これは意外だと思うかもしれない。だが事実そうだったのだ。

この笑いは理解できる気がする。深刻めかして読んでいることを想像する方が難しい。