一言一話 158

下村亮一『晩年の露伴』から。

 

香を見つける

 露伴は、「香」を見つける一番の早道で、しかも金のかからない方法を伝授してくれた。

 「散歩に出るとき、一つの目標をもつんだね。たとえば道路わきのドブの中に、電柱の朽ちて埋もれているようなのを見つけたら、そのかけらを持ちかえって、けずってみるんだよ。杉が地中で変化をおこし、素敵な香木になっていることだってあるんだ。これは山歩きでも同じことで、杉の根っこのようなものが、枯れ木の中に転がっていたら、こいつもためしに持ちかえってけずってみるんだ。中には案外の逸物だって転がっているんだ。こんな木片の中から見つけたものに、『銘』をいれれば、それで結構、楽しめることになるんだよ」

それなりの田舎にいるが、地中がそもそも存在しない。