一言一話 151

下村亮一『晩年の露伴』から。

 

吸物料理二つ

 「くわえという奴は、あのままではそれほどうまいものではないが、これをすりつぶして、揚げ物にするんだ。そして、これを吸物に入れて供すると、このくわえの味を、すぐ何だと当てる人はまずいないほど、独特の味をもっている。これなど料理のやり方で、微妙なものに変化するものの代表的なものだね」(・・・)

 女人は、ありあわせの卵一個で、即座に、塩味だけの汁の中に、その白味を箸の先でつまみ上げながら落とすと、汁の中にはきれいな白玉が浮かび上がる。それに季節のものでもあしらえば、立派な吸物が出来上がった。

「くわえ」というのは慈姑のこと。想像するだけで自分ではやってみないというのが、つくづくだめだな、と痛感。痛感しても結局やらないんだろうな、とそろそろ諦観。