幸田露伴芭蕉七部集『冬の日』評釈の評釈24

笠脱いで無理にも濡るゝ北時雨  荷兮

 

 前句で清水を訪ねた人の風狂の様子をあらわしている。宗祇の句に「世にふるもさらに時雨のやどり哉」というのがある。「無理にも」は「濡れでも」でも済む。騒がしい客に雅に対応することから、遺跡に古句のい香りを味わって、降ってくる時雨に天を仰ぐのが非常に面白い。ただしこの句はさしてよいとも思われず、芝居めいている。