トマス・ド・クインシー『自叙伝』13

 私の耳がこの巨大な風神の音調を聞き、私の眼が金色の生の充溢、天の壮麗さや花の光輝に満たされたとき、そして姉の顔に広がる冷たさに向き直ったとき、私は忘我の状態に陥った。蒼穹が遙かな青空の天頂で開き、一条の光線が走っているようだった。私の精神は稲妻を発し続ける大波の上にいるかのようだった。大波は神の玉座に向かっているようだったが、それはまた我々の前を絶え間なく流れ去っていたのである。飛翔と追跡は永遠に続くかのようだった。氷結が氷結を呼び、死の寒風が私を跳ね返すように思われた。神と死とのなにか強大な関係が、彼らの間にある恐ろしい対立からぼんやりしたなかで進化しようともがいていた。影に隠れた意味が、夢の中で、私のうちにある信託を解読するよう私を悩まし、苦しめ続けている。私は眠ったが、どれほど長くかは言うことができない。ゆっくりと私は忘我の状態から回復した。そして、目覚めたとき、私は前と同じ様に、姉の寝台の近くに立っていた。


 私の心が完全に移ろい、宙ぶらりになって非常に長い時間が経過したと信じるべき理由がある。我に返ったとき、階段に足音がした(私はそう思った)。私は危険を感じた。もし誰かが私を見つけたら、私は再びここに来ることができなくなるだろうからである。それゆえ、私は急いでもうキスすることのできない唇にキスし、罪深いことでもしているかのように人目を憚りながら、こそこそと部屋を出た。かくして、この地球が私にあらわにしてくれたもののうちで最も愛すべき幻視は終わった。かくして永遠の別れは中断された。かくして神聖な愛と悲しみに満ちた別れは恐れによって汚され、完全な愛と悲しみは取り戻すことはできなかった。