幸田露伴芭蕉七部集『冬の日』評釈の評釈49

明日は敵に首おくりせむ 重五

 

 これもまた前句を意想外のところに転じて、術つき力もきわまって、明日は敵に自分の首を授けることになろうと決心した勇士が、この命を捨てて戦死するには心にかかる雲もないが、ただ自分の瘤の異様に大なのを見て、情なき敵の士卒たちが、この瘤はと笑い声を死後の首に浴びせかけることを口惜しがっている。奥のきさらぎから、珍しい景色の山道を行くようで、一歩一歩に景色が変転して神を喜ばせ、目を楽しませる。