2022-06-09から1日間の記事一覧

幸田露伴芭蕉七部集『冬の日』評釈の評釈56

櫛箱に餠すゆる閨ほのかなる 荷兮 一句は、遊女の室中で、櫛などがある鏡台のあたり、白紙を折って新年の飾りの葉を敷いて、小さな餅を据えたところに灯火がほのかにさしている様子である。遊女たちは、幸先がよいことを願って、座敷の床の間に大きな鏡餅を…

トマス・ド・クインシー『自叙伝』

しかしながら、じっとしているのが不可能だった兄は、残りの生涯をかけて悲劇の開拓に一心不乱に取り組むつもりだと宣言した。即座に仕事に取りかかった。すぐさま「スルタン・セリム」の第一幕ができあがった。しかし、すぐに表題が、韻律を無視して、より…

ブラッドリー『論理学』92

§7.しかし、(b)たとえこうした意味を拡がりに与えたとしても、この説は真ではない。いくつかの観念を比較したとき、より狭い意味をもったものが、常により広い適用が為されるわけではない。単純な例を取ってみよう。可視的という観念は、我々全てが認め…