2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

一言一話 66

新=批評的エッセー―構造からテクストへ 作者:ロラン・バルト,花輪光 みすず書房 Amazon 格言 格言はディスクールから切り取られた命題であるというだけではない。この命題そのものの内部においても、また、もっと微妙な不連続性が支配している。正常な文、<…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 40

.. パスカルの「意図の方向づけ」 パスカルのレトリックの原理は腐敗した神学的修辞を分析した、それ自体活発な修辞に満ちた『プロヴァンシャル』の第七書簡に簡潔に述べられている。ベンサムについて述べた際に我々はそれを用いた。しかし、ベンサムからマ…

ブラッドリー『仮象と実在』 161

[それらは因果的に結びついている。] 現象は物理的な系列と心的な系列の因果的な関係を指し示す。だが、この現象は次のような形で生みだされるしるしとしてしか可能ではない。どちらの側も、我々のみるところを逃れてはいるが、他方の条件となっており、それ…

一言一話 65

いかにしてともに生きるか―コレージュ・ド・フランス講義 1976‐1977年度 (ロラン・バルト講義集成) 作者:ロラン バルト 筑摩書房 Amazon 社会的ユートピアと内的ユートピア イディオリトミックな「共生」のユートピアは社会的ユートピアではない。ところが、…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 39

.. ド・グールモンの「分離」 多分、同一化と分裂という問題、それが説得に及ぼす影響について最も鮮やかで、根源的な取り組みを見せたのは、レミ・ド・グールモンのエッセイ「観念の分離」であろう。(『デカダンス、その他諸観念の文化についてのエッセイ…

ブラッドリー『仮象と実在』 160

[身体と魂の関係。それらはひとつではない。] 我々が反対しなければならない見方を指摘することから始めよう。魂と身体はひとつの実在の二つの側面である、あるいは同じものを二回、その存在の二つの面から捉えなおしたものだとみられるかもしれない。ここで…

一言一話 64

いかにしてともに生きるか―コレージュ・ド・フランス講義 1976‐1977年度 (ロラン・バルト講義集成) 作者:ロラン バルト 筑摩書房 Amazon 非現実と脱現実 非現実化すること:私はファンタスムの名のもとに現実を拒絶する。周囲の一切は現実的なものとの関係で…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 38

.. ロシュフーコーにおける一般的、特殊的、個人的動機 文化によっては「観念」の構成要素が異なると論じることができる。あるいは、すべての要素は常にそこにあるのだが、異なった比率にあると論じられるかもしれない。かくして、物々交換の社会の原理は、…

ブラッドリー『仮象と実在』 159

[(3)出来事ではないような心理的な事実は存在するのだろうか。] 3.しかし、出来事の系列としての魂という考え方は、心理学そのものの根拠から攻撃されるかもしれない。出来事以上の心的事実が存在し、そうした事実は我々の定義に反駁すると主張されるか…

一言一話 63

いかにしてともに生きるか―コレージュ・ド・フランス講義 1976‐1977年度 (ロラン・バルト講義集成) 作者:ロラン バルト 筑摩書房 Amazon ベッドと仕事 自分のベッドとよい関係を保っている主体――豊かな、多機能的関係――≠何に関係も結んでいない主体:どうで…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 37

.. ディドロの「パントマイム」論 我々の神話の観点から、ディドロの『ラモーの甥』で「私」と「彼」の間に交わされる、ほとんどヒステリー的とさえ言える才走った対話の「謎めいた」性質についてみてみよう。この混乱と鮮やかなまでの倒錯の理由はすぐに明…

ブラッドリー『仮象と実在』 158

[(2)この系は超越的な自我を含むのだろうか。] 2.我々は魂を現象としてみる見方が、それを身体に依存する隣接物にまでおとしめることにはならないことを見てきた。他の根拠に基づく反論にも答えられるだろうか。心的な系列は、その条件として、なにか超…

一言一話 62

いかにしてともに生きるか―コレージュ・ド・フランス講義 1976‐1977年度 (ロラン・バルト講義集成) 作者:ロラン バルト 筑摩書房 Amazon 共生と事件 「共生」を日常性としてファンタスム化すること:事件を拒み、捨て、吐き出すこと。事件は「共生」の敵であ…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 36

.. 位階の隠喩的な見方 もう一度試してみよう。(直接にあたることはしない。最上のやり方は、どんな機会でも捉えて、同じ中心に向かい異なった接近方法を試してみることにある。) 「高次」と「低次」の存在による位階の原理、ダーウィンの進化論やマルクス…

ブラッドリー『仮象と実在』 157

[反論を論じる。(1)もし現象的なものなら、魂とは有機体の単なる付属物なのだろうか。連続性と配置の問題。魂の理想的な構築。] 我々はここまで、魂と身体がどちらも現象的な構築物であることをみてきたが、次に両者の関係を追わなければならない。しかし…

一言一話 61

記号の国―1970 (ロラン・バルト著作集 7) 作者:ロラン・バルト みすず書房 Amazon 俳句 俳句は、描写も定義もしない(結局、わたしが俳句とよぶのは、不連続な描線すべてのことであり、わたしの読みに提供されるような日本の生活のできごとすべてのことである…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 35

.. 「観念」の優先 「階級の修辞」には、コールリッジが思い描いた「一次的」想像力と「二次的」想像力の区別に似た異なる同一化の種類が含まれている。 パブロフが「条件反射」の実験で研究した類の機械的な連合がある。観念とイメージとの、原因と一般的原…

ブラッドリー『仮象と実在』 156

[絶対の観点から示す。] 先に進む前に、同じ問題を全体の側から見ることは助けになるかもしれない。議論のために、全体において、なんらかの魂の状態でないものは存在しないと仮定しよう(第二十七章)。このことから、我々はそれらの魂は実在であるか、少な…

一言一話 60

記号の国―1970 (ロラン・バルト著作集 7) 作者:ロラン・バルト みすず書房 Amazon 俳句 古池やの句 蛙が水にとびこむ音が芭蕉を禅の真理に目ざめさせたのだと言われるとき、つぎのように理解することができる(このような言いかたは、まだまだ西欧的すぎるの…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 34

.. ヴェヴレンにおける模倣としての「ねたましさ」 ソースタイン・ヴェブレンの『有閑階級の理論』はその特殊例においてよりも「一般的原理」で考えた方がいい。エンプソンはその繊細さにおいて素晴らしいが、ヴェヴレンは不格好に進む。彼の諸動機について…

ブラッドリー『仮象と実在』 155

[それは経験と同一ではない。それを個人の観点から示す。] 問題を二つの側面から、魂が何であり、何でないかを知ることが助けとなるかもしれない。第一に、個人の経験から、次に同じことを外側から、複数の魂の側から見ることにしよう。 それでは内面からは…

一言一話 59

記号の国―1970 (ロラン・バルト著作集 7) 作者:ロラン・バルト みすず書房 Amazon 箱 箱は、包装や遮断幕や仮面の役目をもち、なかに何かを隠し護りつつ指示している、ということで価値をもっている。すなわち、箱は代わりのものをあたえるのである――この表…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 33

.. エンプソンの「牧歌的」同一化 我々はいま、「宮廷作法は、いかに回りくどいものではあっても」と言った。ウィリアム・エンプソンの独創的な著作『英国の牧歌』(イギリスでのタイトルは『牧歌の諸変奏』)は、このほとんど知られていない修辞に関する考…

ブラッドリー『仮象と実在』 154

[魂とはなにか。298] そして、魂が身体以上に自律的だといえないことは明らかである。こちらもまた、純粋に現象的な存在であり、不完全で不整合なあらわれであって、独立した「事物」として自らを維持する力はない。第一巻の批判は、自己が真の実在である…

一言一話 58

テクスト理論の愉しみ―1965‐1970 (ロラン・バルト著作集 6) 作者:ロラン バルト みすず書房 Amazon 意味の問題の三つのレベル これらの意味の問題を、すでに三つのレベルに位置づけることが可能であると思われる。まずは心理学的レベルである。この点に関し…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 32

.. カーライルの「神秘」 マルクスの階級の神秘化についての洞察は予期せぬ方向から、同じくらい執拗な十九世紀の作家によって強化されるのだが、彼は「神秘」を称賛的な用語として用い、その拒絶を美的なものに対する嫌悪と見なしている。我々が言っている…

ブラッドリー『仮象と実在』 153

[身体とはなにか。] 身体とはなにか。直前の章で我々はその答えを予期していた。身体は物理的世界の一部であり、自然そのものは完全に非実在であることを見てきた。抽象によって切り離された全体のある側面があり、それはなんらかの目的にとっては独立した実…

一言一話 57

テクスト理論の愉しみ―1965‐1970 (ロラン・バルト著作集 6) 作者:ロラン バルト みすず書房 Amazon 象徴不能症 象徴不能症とは、わたしが意味の完全な免除と呼ぶものに到達するために、ある文明や社会において行われる非常に局限された努力のことである。そ…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 31

.. 唯名論的隠匿(クロムウェルの動機に関して) マルクス主義のイデオロギー分析は、文学的美学的な過去の遺物のなかで、ただ「諸観念」だけが生き残るという事実によってある意味誤った方向に導かれ得るのではないだろうか。名誉、忠誠、自由、平等、同胞…

ブラッドリー『仮象と実在』 152

第二十三章 身体と魂 [それらは現象であり、反論に対してなんの根拠も与えるものではない。] この章の問題については、我々は希望のない難題に達するように思える。身体と魂との関係は、経験が示すように思えるある問題を提示するが、それは事実上解決されう…