2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

顔という風景――ユン・ガウン『わたしたち』(2015年)

わたしたち [DVD] チェ・スイン Amazon アルチンボルドは野菜から動植物までを組み合わせて肖像画を描いた。シュルレアリストの絵には、顔が下腹部になっているものもある。グレタ・ガルボの顔はロラン・バルトの現代の神話学のテーマになったし、デートリッ…

よろずの紙反故 38

伯楽やさいかち頭がぽんと鳴る トッポギや才気の果ての薄明かり 宮廷人猜疑の果ての薄煙 病み上がり再勤したる薬売り 流刑地の田んぼの中の丸い月

一言一話 142

汚れた顔の天使 ジェームズ・キャグニー自伝 作者:ジェームズ・キャグニー,山田宏一 出帆新社 Amazon 演技について そんなにむかしのことではないが、あるリポーターが、わたしに『白熱』についていろいろと質問し、刑務所のなかでわたしが母親の死の知らせ…

C・S・パース「/形而上学についての論考/」 1

/形而上学についての論考/ 1861年8月21日————1862年3月30日 序 この本の私の意図は三段論法のスタイルで書くことである、というのも、形而上学においては、どんな小さな前進にも注意が必要とされるからだ。散在する意見は、これ以後用いられ…

ブラッドリー『仮象と実在』 238

[有限な知識はすべて条件づけられている。] すでに述べてように、ある真理が観察に基づいているところではどこでも、明らかにどれだけのものが見逃されているか、観察されていないものが事物の大部分になるのかどうか見極めることはできない。しかし、もし…

偉大なる祖母――シルヴァン・ショメ『ベルビル・ランデヴー』(2002年)

ベルヴィル・ランデブー [Blu-ray] ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 Amazon アニメーション映画である。戯画化するにももとにある現実をしっかりと捉えていなければならないし、ナンセンスに傾くにも、確固とした意味が了解されていなければならない…

よろずの紙反故 37

西海でジンギスカンは溺れかけ 悪縁にお百度参りの血豆かな 左郷には大むじなのいる大津史書 与太郎の才おめでたき去年の春 才学を文字喰う虫に奪われて

一言一話 141

汚れた顔の天使 ジェームズ・キャグニー自伝 作者:ジェームズ・キャグニー,山田宏一 出帆新社 Amazon ヴォードヴィリアン わたしは、いまでも、自分を、本質的にヴォードヴィリアンであり、歌と踊りの人間だと考えている。わたしが知っていたヴォードヴィリ…

C・S・パース「なぜ我々は無限について推論できるのか」

1859年10月25日 なにが議論されうるか。定義できるものはなんでも三段論法に組み込むことができる。我々は考えることのできない多くのものを定義できる。我々が定義するのは決して事物ではなく、観念や疑似観念である。さて、我々は考えることのでき…

ブラッドリー『仮象と実在』 237

[知識は条件づけられているか絶対かで、そうしたものは不可能である。] しかし、我々はこれによって、絶対的な知識と仮定的な知識との境界線を渡ることになった。実在はそれ自体にあらゆる経験を含むひとつの体系であり、この体系そのものが経験である――そ…

よろずの紙反故 36

木賊にて左右の敵を撫で終わり 海坊主再縁先は案山子かな 猥文書採録したる近思録 この年の塞翁が馬曲乗りし 白砂州で斎戒をする年男

一言一話 140

小林秀雄全集〈第7巻〉歴史と文学・無常といふ事 作者:小林 秀雄 新潮社 Amazon 運命 歴史の必然といふものが、その様な軽薄なものではない事は、僕等は、日常生活で、いやといふ程経験している筈だ。死なしたくない子供に死なれたからこそ、母親の心に子供…

C・S・パース「/無限の概念/」

なにを我々は議論できるか。定義できるものについては何でも三段論法に組み込める。考えることのできない多くのものについて我々は定義できる。我々が定義するのは決して一つの事物ではなく、観念、あるいはうわべだけの、仮定された観念である。さて、我々…

ブラッドリー『仮象と実在』 236

[絶対を幸福であるといえるだろうか。] 我々は実在がひとつであり、単一の経験であることを見てきた。我々はこのことから困難な問題を考慮することに移ることができる。絶対は幸福であろうか。これは快楽が絶対の述語となりうるかを意味しているだろう。そ…

よろずの紙反故 35

終末の妻に分けたる夏空よ 蜘蛛の眼が虚空に溶ける差異の差異 ぼんぼりをジッポでつける年の暮れ 吐息でね財を受けたる葵君 最強の敵を愛するモグラかな

一言一話 139

小林秀雄全集〈第7巻〉歴史と文学・無常といふ事 作者:小林 秀雄 新潮社 Amazon 歴史と文学 歴史事実の筋金 歴史は決して二度と繰返しはしない。だからこそ僕等は過去を惜しむのである。歴史とは、人類の巨大な恨みに似てゐる。歴史を貫く筋金は、僕等の哀惜…

C・S・パース「我々が神の本性を推論できることを証明するための宗教的思想の限界についての試論」

I 我々はなにを論議することができるだろうか。理解できないものについてはなんであれ論議できないのだろうか。自然や想像のなかに存在しないものについては論議することさえできないのだろうか。三段論法で論じられるものについてはなんであれ我々は論議で…

ブラッドリー『仮象と実在』 235

[絶対はまた(正確には)人格的なものではない。] 絶対は知られてはいるが、ある意味で、我々の経験や知識よりも高次のものである。このことの関連において、私はそれが人格をもっているかどうか問うてみよう。そうした疑問に達したとしても、我々はそれを…

よろずの紙反故 34

金襴にサーベル帯びた小町たち 和泉式部は菜には胡瓜一本を 川岸の塞にこもりてぼろんじを プリズムで分解される犀の角 歯の穴に詰め物したる英霊の木

一言一話 138

小林秀雄全集〈第7巻〉歴史と文学・無常といふ事 作者:小林 秀雄 新潮社 Amazon モオロアの「英国史」について 歴史の持つ根柢の力 過去の事実が、殆ど単に過去の事実だといふ理由で、現在の人間の虚心の裡に蘇る。歴史といふもののもつ根柢の力は其処にある…

C・S・パース「人生のふるまいについての主として個人的な考え」

【パースなんかもちょっとだけ訳していたりなんかして】 1860年6月7日~1888年3月17日 III 1953年 愛は望ましいこと、善きことすべての根底にある。 IV あらゆる真理は無限に拡張できるが、あらゆる真理は普遍的な原則に拡張されるとき、そ…

ブラッドリー『仮象と実在』 234

[しかし絶対は(正確に言うと)魂からなるのではない。] 非合理的な偏見からくる反論を離れ、いくつかの興味のある点を考慮することに進もう。絶対は魂から構成され成り立っているといえるだろうか。この疑問は曖昧で、いくつかの意味で議論されねばならな…

よろずの紙反故 33

愛欲の海にもまれる海軍よ 鉄鎖操る女の上腕部 開化には多くの豆を赤飯に 仏らが車座になる橋の上 見る前に透体離脱で魔の森にさあ

一言一話 137

小林秀雄全集〈第1巻〉様々なる意匠・ランボオ 作者:小林 秀雄 新潮社 Amazon 旧刊の全集で読んでいるので、この本に載っているかどうか。 弁明――正宗白鳥氏へ 正宗白鳥 散文的な かういふロマネスクな題材をあつかひ、ロマネスクな結果を得まいとするに際し…

ケネス・バーク=マルカウ・カウリー書簡 5

989 東通り ウィーホーケン N.J 1915年12月10日 [PS] 親愛なるマルコム 君のがっかりする手紙が今朝届いたが、深い憤りからすぐに返事を書く。君はどうにかしてクリスマス前の月曜の夜か、もっとも遅くとも火曜日の朝にここに来なければならな…

ブラッドリー『仮象と実在』 233

[絶対は経験である。] あらゆる疑いを越えて、実在がひとつであることは明らかである。それは統一であるが、問い続けなければならないのは、なにの統一かということである。そして、我々がすでに見いだしているのは、我々が知るすべてのものはすべて経験か…

よろずの紙反故 32

サウス式海岸沿いの洗面所 ラマ僧が開基する日の短さよ 改機には夏の日永の縁先で 階段を積み残したる芝公園 目にしみる暁のなか皆勤し

一言一話 136

Lacan 作者:Bowie, Malcolm Harvard University Press Amazon 連合主義の心理学の欠陥は、それが常に<類似>という観念によって動き、実際それを心的モデルをつくりあげるときの首尾一貫性の全能の保証として使用するのであるが、その観念が何をもたらすか…

ケネス・バーク=マルカウ・カウリー書簡 4

989 東通り ウィーホーケン N.J 1915年11月24日 [PS] 親愛なるマルコム 今日君のひどい手紙を受け取った。もちろんそれは僕にとって古くからのいつに変わらぬ対比———僕に君のことを俗物と呼ばせ、君に僕のことを気取り屋と呼ばせる争いだ。感動…

ブラッドリー『仮象と実在』 232

[このことは絶対にも当てはまる。それは一なるものである。] 絶対の主要な性格についていえば、我々の立場は簡単に言えばこうである。我々の結論は確かであり、それを疑うことは論理的に不可能だということを理解した。そのほかに観点はないし、その見解を…