偉大なる祖母――シルヴァン・ショメ『ベルビル・ランデヴー』(2002年)

 

 アニメーション映画である。戯画化するにももとにある現実をしっかりと捉えていなければならないし、ナンセンスに傾くにも、確固とした意味が了解されていなければならない。現実というのは糞リアリズム的な町並みや人物造形のことではなく、いってみればアレゴリー化された現在である。フレッド・アステアがたつような大部隊で活躍していたトリプレット(三つ子)はすでに老いて、小さなキャバレーの舞台に立っており、ゴキブリの這いずるぼろアパードで、蛙を主食にしている。人身売買をするマフィアもいる。孫を連れ去られたもう一人のおばあさん=祖母が、たまたま三つ子と出会い孫である青年を助けるのだが、感動的なのか彼女たちが真に助けようとするのは、彼の命のみならず、彼の生きている幻想だということで、そこにこそ真の大人の姿、偉大なる祖母の姿を発見して感動する。