ブラッドリー『仮象と実在』 106

... [決して、それは絶対と両立不可能なものではない。そこでいかなる多様性も失われるわけではない。] ついでに、もう一つの点、悪において強く感じられる類を見ない人格性について言及しておこう。より詳しい考察については、「私のもの」と「これ」との…

一言一話 13

空間の詩学 (ちくま学芸文庫) 作者:ガストン バシュラール 筑摩書房 Amazon イメージ、存在の生成 イメージはわれわれのなかに根をはる。たしかに外部からうけいれたものだが、自分にもきっとこれを創造することができた、自分がこれを創造するはずだった、…

ブラッドリー『仮象と実在』 105

... [不道徳としての悪。] 道徳的悪は更なる難点をもたらす。我々が目的とする内的観念と外面的な存在との単なる欠如や失敗の問題ではない。実際の戦いや対立と関わっている。我々はある観念をもっており、それには実現しようとする目的がある。他方におい…

一言一話 12

空間の詩学 (ちくま学芸文庫) 作者:ガストン バシュラール 筑摩書房 Amazon 詩、魂の働き 詩はたましいの働きであることをみとめなければならない。たましいにむすびつけられた意識は、精神の諸現象にむすびつけられた意識よりもはるかに静謐であり、非志向…

ブラッドリー『仮象と実在』 104

... [目的を実現することの失敗としての悪。] II.無駄、失敗、混乱としての悪を考えてみよう。世界の大部分は偶然の戯れである。自然と我々の生は、一つのことが実現されるときには、百ものことが失敗に終る闘争の場を示している。これは古くからの不満の…

一言一話 11

空と夢 〈新装版〉: 運動の想像力にかんする試論 (叢書・ウニベルシタス) 作者:ガストン バシュラール 法政大学出版局 Amazon 実質的感動 ポー <<実質的感動>>に対するエドガー・ポーの詩法の忠実さは徹底したものであって、それはどんな短い短篇にも現…

ブラッドリー『仮象と実在』 103

... [悪のいくつかの意味。苦痛としての悪。] 悪は、我々みなが知るように、いくつかの意味がある。(I.)苦痛、(II)目的実現の失敗、(III)不道徳、というのが挙げられる。最後の点についての十分な考察は後の章で、有限な人間と絶対との関係として扱うこ…

一円一話 10

空と夢 〈新装版〉: 運動の想像力にかんする試論 (叢書・ウニベルシタス) 作者:ガストン バシュラール 法政大学出版局 Amazon ポー 夢想の原始性 夢とイメージ 語り手は読者を恐ろしい場景の前においたのではなく、恐怖状況のなかにおいたのであり、彼は根源…

ブラッドリー『仮象と実在』 102

第十七章 悪 ... [ある間違いによってもたらされた難点。] 我々は誤りが絶対における完成と両立可能であることを見てきたが、悪の場合にも同じ結果に達するよう試みてみなければならない。悪は、もちろん、重大な難点をもたらす問題であり、なかでも最悪の…

一言一話 9

空と夢 〈新装版〉: 運動の想像力にかんする試論 (叢書・ウニベルシタス) 作者:ガストン バシュラール 法政大学出版局 Amazon ポー 失神 ポーは失神を、いわばわれわれの存在内部における墜落として、まず肉体的なものの意識が次々と消え、ついで道徳的なも…

ブラッドリー『仮象と実在』 101

... [この可能なる解決は実在であるに違いない。] いまのところこの解決を細部にわたって立証することはできず、許されてもいない。私が認め、主張したいと望む一つの説に止まっている。あらゆる誤りを取り上げて、全体に戻すことでそれがどう解消されるか…

一言一話 8

空と夢 〈新装版〉: 運動の想像力にかんする試論 (叢書・ウニベルシタス) 作者:ガストン バシュラール 法政大学出版局 Amazon ポー 力動的想像力の優位 彼は客観的なイメージのフィルムをくり広げる前に、読者のたましいのなかに、この想像的墜落を導入する…

ブラッドリー『仮象と実在』 100

... [その事実上の不調和は消し去ることができる。] しかし、我々の考察は不完全であるために擁護できない、というのは正当な反論であろう。誤りは単に否定的なものでは<ない>からである。孤立した不調和の内容は、結局のところ、事実上の不調和を伴って…

一言一話 7

瞬間と持続 (1969年) 作者:掛下 栄一郎,ガストン バシュラール Amazon ベルグソンとバシュラール ベルグソン氏とわれわれとの間には、常に変わらない方法の相違が存在する。すなわち彼は、出来事にみちた時間を、それらの出来事の意識の水平そのものにおいて…

ブラッドリー『仮象と実在』 99

... (誤りは分割と再配列によって真理となりうる。) 矛盾を取り除く唯一の方法が存在し、それは分解による。ある要素が抜き去られる代わりに、区別をもったより大きな要素を得て、対立が取り除かれる。最初はcとbという衝突し合う不整合な性質をもったAをも…

一言一話 6

新しい科学的精神 (ちくま学芸文庫) 作者:ガストン・バシュラール 筑摩書房 Amazon リズム・時間 リズムが構造に働きかけることをよく示している実証的な実験が、いくつかある。・・・もしフォスゲンCOCL2に、振動数がちょうど<塩素三五>の帯スペクトルに入る…

ブラッドリー『仮象と実在』 98

... (誤りはいかようにか、実在に属している。) 問題は誤りと絶対との関係にある。虚偽の現象がどうして実在のなかにあることが可能なのだろうか。我々は幾分かは誤りがなにによって成り立っているかを見ているのでもあるが、我々本来の問題にも直面している…

一言一話 5

石川淳全集〈第11巻〉 作者:石川 淳 筑摩書房 Amazon 天保四年から八年にかけての飢饉のときのこと 天保四年の春、尊徳は茄子を食つて、それが秋の味であることを感じあて、ただちに異変を未然に察し、農民に誡してあらかじめ稗を作らせておき、やがて本物の…

ブラッドリー『仮象と実在』 97

... (誤りは実在と調和しないために実在によって排除される。) 1.誤りが実在によって排除されるのは、実在が調和し、必然的にそうとられるべきである一方で、誤りが自己矛盾しているからである。それが(もしそれが可能なら)存在と一致しない内容だと言いた…

一言一話 4

Original Jelly Roll Blues Horgi Music Digital Productions Amazon ジャズは、甘美に、ソフトに、たっぷりのリズムで、スペイン風の味付けをもって演奏すべきである。 ジェリー・ロール・モートン ジャズは1803年以前のフランスの植民地であったルイジ…

ブラッドリー『仮象と実在』 96

... (誤りは現象であり、虚偽の現象である。) 心理学や論理学では、問題はより容易である。誤りは間違った推論と同一視され、典型となるモデルと比較することができる。また、それが進む各段階を示すことができる。しかし、こうした探求は、いかに興味深いも…

一言一話 3

新しい科学的精神 (自然選書) 作者:ガストン・バシュラール 中央公論新社 Amazon デカルトの蜜蝋 もし蜜蝋が変化するなら、私も変化するのである。私は私の感覚といっしょに変化する。そしてこの感覚は、私がそれを思惟しているその瞬間には、私の全思考にほ…

ブラッドリー『仮象と実在』 95

... (誤りの問題。それはジレンマを含む。) 誤りは疑問の余地なく危険な主題であり、その主たる難点は次のようなものである。我々は一方において非存在と実在とのあいだにあるものを受け入れることはできず、他方においては、誤りは頑なにそのどちらであるこ…

一言一話 2

普賢 佳人 (講談社文芸文庫) 作者:石川淳 講談社 Amazon ミサは立ちすくんだままおどろくひまさへなくわたしの腕の中に抱き緊められてしまつた。そのときミサはちよつと瞼をそよがせたやうに見えたが、それはわたしのふれえたかぎりでは諦めとか愁ひとかいふ…

ブラッドリー『仮象と実在』 94

. 第十六章 誤り ... (よき反論は単に説明できないなにかではなく、矛盾する何ものかに基づいてなされねばならない) 我々は我々が受け入れざるを得ない絶対の輪郭を描き、思考の一般的な道筋を指摘してきた。次には、一連の手強い反論に向かわねばならない。…

一言一話 1

バルザック全集〈第4巻〉田舎医者・ピエレット (1961年) 東京創元社 Amazon たぶん完全な幸福というものは、われわれ人類の存続など許さない怪物かもしれませんね。 バルザック『田舎医者』新庄嘉章・平岡篤頼訳 ここで「幸福」といわれているのは、魂と魂と…

ブラッドリー『仮象と実在』 93

... (我々の言う絶対は物自体ではない。) こうした絶対が物自体なのではないかという反論については、反論者が自分でなにを言っているのか理解しているのかどうか疑わざるを得ない。すべてを抱握する全体がその名に値するものであるかどうか、私の推測を越…

ブラッドリー『仮象と実在』 92

... (我々の言う絶対は物自体ではない。) こうした絶対が物自体なのではないかという反論については、反論者が自分でなにを言っているのか理解しているのかどうか疑わざるを得ない。すべてを抱握する全体がその名に値するものであるかどうか、私の推測を越…

ブラッドリー『仮象と実在』 91

... (相関的な形式はそれを越えた完成形を含んでいる。) 相関的な形式は思考がよって立ち、発展するための妥協である。全体性を破壊する差異を結びつけようとする試みである。(1)潜在的な同一性によって共存を強いられる差異、多数性と統一との妥協――そ…

ブラッドリー『仮象と実在』 90

... (他者は思考自体が望み、含むものであるなら存在すると言える。その事例。) 実際の判断を取上げ、他者を見いだすという視点でその主語を調べてみよう。ここにおいて、我々はすぐさま問題の種に出くわす。常に述語よりも現前する主語により多くの内容が…