幸田露伴「あやしやな」

 明治二十二年の短編。日本人が一人も登場しない。ある男が死に、殺人事件と疑われる。関係者のうち、妻と医者は容疑を離れ、夫婦の娘に乱暴をはたらき、自殺に追いやった伯爵が犯人だとわかる。ゴシックロマンス的な探偵小説を目指していて、幽霊のようなものも登場し、謎解きはたいした要素とはならない。露伴も最初のうちはよく英語を読んでいたようだから、どこかから種を仕入れたのか、あるいはもっと英語の堪能だった後に歴史家となる弟の幸田成友などから話を聞いたのか。長編第一作目の『露団々』も海外が舞台だったが、中国の小説を翻案したものだった。