小説

一言一話 65

いかにしてともに生きるか―コレージュ・ド・フランス講義 1976‐1977年度 (ロラン・バルト講義集成) 作者:ロラン バルト 筑摩書房 Amazon 社会的ユートピアと内的ユートピア イディオリトミックな「共生」のユートピアは社会的ユートピアではない。ところが、…

一言一話 52

文学と問い 事物は何を意味するか、世界は何を意味するか?文学とはすべて、この問いなのだ。が、すぐさま言い添える必要がある。文学の特色といえばこれなのだから。つまり文学とは<この問い、マイナスその答え>なのである。かつてどんな文学にせよ、けっ…

一言一話 51

批評をめぐる試み―1964 (ロラン・バルト著作集 5) 作者:ロラン バルト みすず書房 Amazon オブジェ オブジェは<始動>させる。それは観念よりも測り知れぬほど迅速な、文化の媒介者であり、<<場面>>とまったく同等に能動的な、幻覚の生産者である。それ…

一話一言 50

批評をめぐる試み―1964 (ロラン・バルト著作集 5) 作者:ロラン バルト みすず書房 Amazon 文学と媒介 あらゆる文学がよくわきまえていることだが、文学はオルフェウスと同じく、死の危険を冒すことなしに、自分が目にしたもののほうを振り返ることができない…

一言一話 47

演劇のエクリチュール―1955-1957 (ロラン・バルト著作集 2) 作者:ロラン・バルト みすず書房 Amazon 意味作用の問題に関する三つの文学的試み 意味作用の問題に関する三つの文学的試みを例として挙げておく。たえず物の意味を増大させようと試みた、超現実主…

一話一言 46

演劇のエクリチュール―1955-1957 (ロラン・バルト著作集 2) 作者:ロラン・バルト みすず書房 Amazon バルザックとリアリズム バルザックはリアリズムの作家である。というのも彼は人間関係を最終的には政治的関係としてとらえたのだ。ここにはまさに新たな思…

一言一話 40

決定版 夏目漱石 (新潮文庫) 作者:淳, 江藤 新潮社 Amazon リア王の自然と仙人の自然 漱石 リアがこの半裸の乞食に対して着衣を投げ与えるのは、「自然」のみにくさに耐え兼ねた反射的な行為である。つまり、「愛」とか「倫理」とかは、この行為を出発点とし…

一話一言 39

決定版 夏目漱石 (新潮文庫) 作者:淳, 江藤 新潮社 Amazon 私小説と純粋小説 これらの有能な青年作家達[中村真一郎ら]の見落としている重要なことは、我が国の自然主義的<純文学者>達によって書かれて来た私小説というジャンルが、やはり一種独特の方法を…

一話一言 38  

決定版 夏目漱石 (新潮文庫) 作者:淳, 江藤 新潮社 Amazon 文学が判らぬという才能 漱石 彼らは[藤村や花袋]、この狂人めいた文部省留学生にくらべてはるかに西欧文学の魅力に忠実だったので--即ち、日本の現実に盲目だったので、--それだからこそ、ドスト…

一話一言 22

「絶対」の探求 (岩波文庫) 作者:バルザック 岩波書店 Amazon 心情の記憶しか、彼女はもっていないのだった。 日常的な細やかな記憶を忘れることはないが、知識に関することはすぐに忘れてしまうこと。夫は化学に夢中になり、財産をすり減らす。女性的なもの…

一話一言 17

太陽肛門 作者:バタイユ,ジョルジュ 景文館書店 Amazon 狂熱の媒介者としての<である> 世界がまさしく戯画的であることは明らかだ。すなわち何を眺めてもいまひとつのものの戯画である、或いはまた期待外れなかたちでの同一物である。 反省にふける頭脳の…

一言一話 16

文学と悪 (ちくま学芸文庫) 作者:ジョルジュ バタイユ 筑摩書房 Amazon サド 性的な無秩序 性的な無秩序とは、限界づけられているかぎり自分にも他人にも統一あるものとして確立されているわたしたちの相貌を、解体するものにほかならない(その無秩序は、す…

一言一話 15

文学と悪 (ちくま学芸文庫) 作者:ジョルジュ バタイユ 筑摩書房 Amazon サド 自然 サドの言うことを<文字どおり>に真にうけることほど無駄なことはない。・・・概して彼は、神のかわりに、<永久運動の状態にある自然>を設定しているのである。しかも彼は、…

一言一話 11

空と夢 〈新装版〉: 運動の想像力にかんする試論 (叢書・ウニベルシタス) 作者:ガストン バシュラール 法政大学出版局 Amazon 実質的感動 ポー <<実質的感動>>に対するエドガー・ポーの詩法の忠実さは徹底したものであって、それはどんな短い短篇にも現…

一円一話 10

空と夢 〈新装版〉: 運動の想像力にかんする試論 (叢書・ウニベルシタス) 作者:ガストン バシュラール 法政大学出版局 Amazon ポー 夢想の原始性 夢とイメージ 語り手は読者を恐ろしい場景の前においたのではなく、恐怖状況のなかにおいたのであり、彼は根源…

一言一話 9

空と夢 〈新装版〉: 運動の想像力にかんする試論 (叢書・ウニベルシタス) 作者:ガストン バシュラール 法政大学出版局 Amazon ポー 失神 ポーは失神を、いわばわれわれの存在内部における墜落として、まず肉体的なものの意識が次々と消え、ついで道徳的なも…

一言一話 8

空と夢 〈新装版〉: 運動の想像力にかんする試論 (叢書・ウニベルシタス) 作者:ガストン バシュラール 法政大学出版局 Amazon ポー 力動的想像力の優位 彼は客観的なイメージのフィルムをくり広げる前に、読者のたましいのなかに、この想像的墜落を導入する…

一言一話 2

普賢 佳人 (講談社文芸文庫) 作者:石川淳 講談社 Amazon ミサは立ちすくんだままおどろくひまさへなくわたしの腕の中に抱き緊められてしまつた。そのときミサはちよつと瞼をそよがせたやうに見えたが、それはわたしのふれえたかぎりでは諦めとか愁ひとかいふ…

一言一話 1

バルザック全集〈第4巻〉田舎医者・ピエレット (1961年) 東京創元社 Amazon たぶん完全な幸福というものは、われわれ人類の存続など許さない怪物かもしれませんね。 バルザック『田舎医者』新庄嘉章・平岡篤頼訳 ここで「幸福」といわれているのは、魂と魂と…

五大洋発掘記 2 ジャン・ロラン『仮面物語集』

仮面物語集 (1984年) (フランス世紀末文学叢書〈7〉) 作者:ジャン・ロラン メディア: - 小浜俊郎訳、国書刊行会、「フランス世紀末文学叢書」の第七巻。 1984年。 ジャン・ロランは1855年ノルマンディーの港フェカンに生まれ、1906年に51歳で…

挫折と充足のアンチノミーーーバルザック「あら皮」(1831年)

あら皮 〔欲望の哲学〕 (バルザック「人間喜劇」セレクション(全13巻・別巻二) 10) 作者:バルザック,Balzac 発売日: 2000/03/30 メディア: 単行本 周囲のものに「なんともいえない恐ろしさ」をおぼえさせた青年、ラファエルが賭博場に入ってきて、一枚の金…

頼みになる拒絶をもとに人間は邂逅できるかーー椎名麟三『邂逅』(昭和27年)

邂逅 (1976年) (旺文社文庫) 作者:椎名 麟三 メディア: 文庫 椎名麟三に関しては「深夜の酒宴」と「重き流れのなかに」その他初期の短編を数十年前に文庫で読み、教文館からでているキリスト教に関するエッセイ集の端本を読んだことがあるだけで、そのときに…

裸の営為ーー幸田露伴『ウッチャリ拾ひ』

幸田露伴 (日本幻想文学集成) 作者:幸田 露伴 発売日: 1991/10/01 メディア: ハードカバー 埋め立てが大規模におこなわれるようになったのは、江戸時代に入ってからで、日比谷の辺りまで入り江が食い込んでいた。現在の中央区、江東区、港区の一部は江戸時代…

白銀の図書館 19 モダニスムの空ーー安岡章太郎「ガラスの靴」(昭和26年)

ガラスの靴・悪い仲間 (講談社文芸文庫) 作者:安岡章太郎 発売日: 2014/03/14 メディア: Kindle版 発表された年は私が生まれた年の10年以上前であり、そもそも大学生になるまでは千葉や神奈川の郊外に住んでいて、東京にでることなど滅多になかったので、…

白銀の図書館 18 小説の唄い調子ーー野間宏『肉体は濡れて』(1947年)

野間宏作品集〈1〉暗い絵 崩解感覚 作者:野間 宏 発売日: 1987/11/06 メディア: 単行本 野間宏はほとんど無縁に過ごした作家のひとりで、大学生のころに『暗い絵』(1946年)を読んだくらいのもので、冒頭からレンブラントの絵画の描写が続くことは覚え…

白銀の図書館 11 プラトン的荒野〜河上徹太郎について Ⅲ

流れる (新潮文庫) 作者:文, 幸田 発売日: 1957/12/27 メディア: 文庫 女主人は「演芸会」のために毎日清元の練習をしている。その会とは「みんなが力を協せて、わが土地のためによそ土地に負けない名舞台・名演技をしようといふのではなくて、たがひに意地…

電気石板蚤の市 3 田中小実昌『オチョロ船の港』(1979年)

オチョロ船の港 (1979年) 作者:田中 小実昌 メディア: - 7編の短編からなっている。泰流社というあまり聞かない出版社からでている。バスに乗るのと哲学書を読むのが好きな作家。同名の短編の冒頭のあたり。 道路の表面がしろいのは、瀬戸内の花崗岩系の土…

電気石板日録 5 袖付けに涙をこぼし見る月はアリスが泳ぐ豊饒の海

ベートーヴェン:交響曲全集・ヴァイオリン協奏曲(完全生産限定盤) アーティスト:ブルーノ・ワルター 発売日: 2019/11/27 メディア: CD 吉野葛・蘆刈 (岩波文庫 緑 55-3) 作者:谷崎 潤一郎 発売日: 1986/06/01 メディア: 文庫 イン・ヴォーグ:ザ・エディター…

白銀の図書館 4 朝吹真理子『きことわ』(2011年)

きことわ (新潮文庫) 作者:朝吹 真理子 発売日: 2013/07/27 メディア: 文庫 野坂昭如コレクション〈2〉骨餓身峠死人葛 作者:野坂 昭如 発売日: 2000/11/01 メディア: 単行本 退嬰的であることにおいては人後に落ちない自信をもつ私ではあるが、実に久しぶり…

白銀の図書館 3 アルフレッド・ジャリ『フォーストロール博士言行録』(1898年)

フォーストロール博士言行録 (1985年) (フランス世紀末文学叢書〈6〉) 作者:アルフレッド・ジャリ メディア: - 「フランス世紀末文学叢書」は国書刊行会から1980年代から全15巻で刊行された。しかし、いわゆる世紀末のデカダンス小説といわれて連想す…