一話一言 46
バルザックとリアリズム
バルザックはリアリズムの作家である。というのも彼は人間関係を最終的には政治的関係としてとらえたのだ。ここにはまさに新たな思想がある、その思想はたとえばゾラにはなかったものであり、そして決定的である。この思想とは構造の概念である。リアリズムはある社会の深層構造をとらえる芸術である。構造をとらえることは、つまり重要なものを見分け(典型)、無意味なものを捨てることである。現実それは有意的なものである。リアリズムは正しい意味作用の芸術である。
リアリズムは、バルザック的な意味においては、目で見ることのできない社会構造を捉えることであり、『あら皮』『「絶対」の探究』『サラジーヌ』のような「幻想的な」作品の著者であることにも何ら不思議はない。ある種の「見者」である。