一言一話 90

 

サド 強者の危機

 もしたった一度でも強者が自分だけの快楽を求めたがために不幸を見出し、またもしも自分の専制の行使においてわずか一度でも犠牲者となるならば、彼はおしまいであり、快楽の法律は欺瞞となって現われるであろうし、人間は、悪行によって勝利をしめるかわりに、最もわずかな悪へも気をつかいつつ平凡に再び生きはじめるであろう。

絶大な権力を持ってはいるが、うらはらに、脆弱な存在でもある。