一言一話 114

 

 

ルイス・キャロル ナンセンス

ルイス・キャロルの<<ナンセンス>>の重要性の源泉はつぎのような事実のうちにある。すなわち、彼の心の奥深いところには、一方においては信仰の受容と理性の行使とのあいだに、他方においては鋭敏な詩意識と厳格な職業上の義務との間に矛盾がわだかまっていたのであるが、彼の<<ナンセンス>>こそ彼にとってこの深刻な矛盾を生の根源において解決するものであった、という事実がそれである。この主観的解決の特質は、客観的な、まさしく詩的次元の解決によって裏打ちされているということにある。すなわち、精神はあらゆる種類の障礙に直面するとき、<理窟に合わぬもの>(l'absurde)のうちに理想的な突破口を見いだすことができるのである。理窟に合わぬものに好意を抱く人のまえには、子どもたちが住んでいる神秘的な世界がふたたび開かれる。たんなる<<語呂合わせ>>から始めて、行動と夢想とを和解させて器官の満足を得んがための、行き当たりばったりの手段としての子どもの<遊び>が、このようにして権利を回復させられ、そして威厳を与えられるのである。

理屈にあわぬことによって、精神の障害の突破口が見いだされること。