幸田露伴芭蕉七部集『冬の日』評釈の評釈48

口をしと瘤をちぎる力無き 野水

 

 「瘤」ははふすべと読んでも、しいねと読んでもいいが、ふすべと読まれてきた。こぶである。『倭名抄』に従おうとする者はしいねと読むべきだろう。前句の縁さまたげの恨みを縁談不成立と見なして、ここでは花婿になろうとした男が大きな瘤があるために嫌われて、仲人の説得も及ばず、破談になってしまったが、といっても瘤をちぎり取ることもなく、口惜しいと瘤のある妙な顔でいっているおかしさを読んだ。悲しくもおかしいさまが、人に笑いを催させる。