英雄

 

 

 英雄は胸を張って闊歩し、高邁な志を述べ、最後には腹を切って死ぬものだという中野重治の詩があったが、柴田宵曲の『明治の話題』によると、日露戦争当時、雑誌などでも大いに青少年の士気を鼓舞すべく、英雄偉人が特集されたらしい。大町桂月の主宰する『学生』では各府県の偉人投票を募り、「郷土偉人号」という臨時増刊を出したが、東京でもっとも票を集めたのは幡随院長兵衛だったという。