長谷部安春『流血の抗争」(1971年)

 

 

宍戸錠はともかく、藤竜也沖雅也がヤクザ映画にでているのは珍しい。梶芽衣子もでている。

 

東映の実録ヤクザものを意識したのだと思うが、とはいっても、『仁義なき戦い』よりは前の映画である。無国籍映画の伝統がある日活だからというわけでもないだろうが、最後まで抗争が行われている場所と東京との位置関係がよくわからなかった。敵役である愚連隊上がりの新興ヤクザの事務所には「川田支部」とあって、栃木や千葉にも川田という場所はあるようだが、どうもしっくりこない。ほとんど、緑はなく、だらだらと商店街やビルが立ち並んでいるような場所で、なんとなく川崎を思い浮かべたりもしたが、私は川崎にすら数回しか行ったことがないので、当てにはならない。

 

全編を通じてほとんど銃が使用されず、長ドスが主として使用されているのが、かえって新鮮。

 

ドスを使用するところに、任侠映画の雰囲気が残されているからか、『仁義なき戦い』には見られなかったような、宍戸錠藤竜也沖雅也のホモ=ソーシャルな濃密な官能性がぎっしり詰まっている。