伝記石板日録 6 生活の塵の積もった方丈は澱みのなかで徐々に沈みぬ

 

保田與重郎萩原朔太郎から聞いた話。

 

なほこの他に計画中のものとして、「小泉八雲」「日本詩歌論」「女性と文学」があった。

 また小生が直接に聞いた話だが、「方丈記」の如き詩篇を、近年の世相を題材とて作らうと思つてゐると云はれてゐた。さうしてすでに出来上つた一、二ケ所を喑んじて、聞かせてもらつたこともあつた。しかし小生はそれを記憶し得なかつた。(「萩原朔太郎詩集解題」)

 

 

 『方丈記』は『徒然草』とは違って、さしたるエピソードもなく、無常感だけが綴られていく印象があってどう一新するのかあまり想像できないが、ずいぶん昔に読んだときの印象が元になっているのであてにはならない。