一言一話 155

下村亮一『晩年の露伴』から。

 

露伴 浮かし燗

 露伴の自宅での酒の燗は、露伴流といってもよいもので、少量の酒を銚子に入れ、それを人肌の燗で、長い時間を、同じ温度で楽しむという、きわめて贅沢で、家人泣かせのものであった。いうところの「浮かし燗」というのであるが、こんな気遣いを、旅の宿で求めることは出来ない。

繊細さというのが多くの露伴のイメージから抜け落ちているところ。