2021-03-18 悲劇と科学 アフォリズム ホワイトヘッド 科学と近代世界 (ホワイトヘッド著作集) 作者:A.N.ホワイドヘッド,上田 泰治,村上 至孝 メディア: 単行本 ギリシャが科学的精神の濫觴の地であるなら、科学もまた劇的な要素をもっていたといえる。実際、アリストテレス的に考えれば、たとえば、ものは重力という目的因によって、高いところから低いところへ落下するといえる。ホワイトヘッドによれば、悲劇の本質は登場人物を見舞う不幸にあるのではない。運命の不可避性にあるという(『科学と近代世界』)。この不可避性が科学にも共通し、近代のヨーロッパにも通じている。近松の「悲劇」には纏綿たる情緒はあるが、不可避性は存在しない。多くの場合、家、つまり社会的な制度から脱出すればいいだけのことで、そこに科学に通じる呵責な運命は存在しない。